死んだはずのジグソウに思いがけない後継者が現れる。彼はなぜジグソウの遺志を継ごうとしたのか。その手口は残忍極まりないものの、犠牲者の側にある種の「殺されても仕方のない理由」が存在するだけに、後味は悪くない。(50点)
死んだはずのジグソウに思いがけない後継者が現れる。彼はなぜジグソウに選ばれたのか、そしてなぜジグソウの遺志を継ごうとしたのか。些細な原因で凶悪な犯罪に手を染めた人間に鉄槌を下す、彼のいうところの「正義」が今回のテーマになっている。その手口は残忍極まりないものの、ジグソウの行動自体は悪人を懲らしめるというまっとうなもの。犠牲者の側にある種の「殺されても仕方のない理由」が存在するだけに、意外に後味は悪くない。
目覚めるとコンクリートの床の上で首輪につながれている5人の男女。ジグソウのヒントと共にゲームが始まり、1人また1人とトラップの餌食になっていく。一方、ジグソウ事件を追ううちに自分自身ジグソウに殺されかけたストラム捜査官は、ホフマン刑事が事件に深くかかわっていると見当をつける。
ジグソウを名乗るために必要な資質とは何か。妹の復讐のために犯人をリンチした上処刑したホフマンに、初代ジグソウはただいたぶって殺すのではなく、更生のチャンスを与えるのが肝心と諭す。悪を憎み悪を裁くために自ら巨大な悪となる。そして過去を省みて人生に足りなかったものに気づいた者だけが生き残れるという仕組み。ホフマンによってあらたな被験者となった5人は、ジコチューな生き方を改めて他人と協力し、時には自己犠牲も厭わない心構えを要求される。だが、そこに至るまでに本来の人間性を丸出しにしたものは淘汰されていく。そのあたりの人の考えを読みどう行動するかを予測するという心理ゲームの味わいはここでも健在だ。
しかし、緊張と恐怖を盛り上げるために神経を逆なでするような不快な音楽が始終鳴り響き非常に耳障りだ。もちろんこういうタイプの映画ではお約束なのだが、この作品では逆効果。もっとジグソウの高い知性や教養・精神性を象徴してほしかった。ハンニバル・レクターのマネをすることはないが、優雅で上品な音楽で彩ればスタイリッシュな映画になっていたに違いない。
(福本次郎)