お忙しい方に、最高に良い映画を観て頂くための映画批評サイト【映画ジャッジ!】

通映画批評

グッド・バッド・ウィアード

◆主演3人、特にイ・ビョンホンが魅力的な韓流ウエスタン。娯楽作として十分に楽しめるが、ロマンチシズムが希薄である点が惜しい(75点)

グッド・バッド・ウィアード

© 2008 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

 1930年代の満州を舞台に、マカロニ・ウエスタンの世界を「韓流ウエスタン」として復活させる。そんな奇抜なアイデアは、ともすればキワモノを生みがちだが、チョン・ウソン、イ・ビョンホン、ソン・ガンホという3人の俳優たちを得て、見事に娯楽作品として結実した。同じように日本でウエスタンをやろうとした三池崇史の「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の失敗に比べると、成功と言えるだろう。

 タイトルを直訳すると、「いい奴、悪い奴、変な奴」。これはセルジオ・レオーネのマカロニ・ウエスタンの名作「続・夕陽のガンマン」の原題「the GOOD, the BAD, and the UGLY」(いい奴、悪い奴、嫌な奴)のもじりだ。戦争を背景に、「宝探し」で3人が争い、ラストに「3すくみ」の決闘があるのは本家と同じだが、舞台が満州だから、そこに日本軍や馬賊が絡んでくる。

 レオーネ作品は「いい奴」にクリント・イーストウッド、「悪い奴」にリー・ヴァン・クリーフ、「嫌な奴」にイーライ・ウォラックと、3人の役者が素晴らしかった。特にリー・ヴァン・クリーフは、頭の薄い小汚いオヤジがどうしてこんなに、と驚くほどのカッコよさだった。

 「甘い人生」「箪笥」のキム・ジウンがメガホンを取った本作も、本家に負けないくらいに主演3人がいい。「いい奴」の賞金稼ぎにチョン・ウソン、「悪い奴」の殺し屋にイ・ビョンホン、「変な奴」のこそ泥にソン・ガンホ。

 レオーネ作品と同じく、「悪い奴」イ・ビョンホンが特に素晴らしい。目の下に隈を作った死に神メイクもぴったり似合っている。いちいち決める表情とポーズが様になっていて、ナイフ捌き、銃捌きも鮮やかだ。韓流セクシー・スターのビョンホンはこの作品でも上半身裸になって、鍛え上げた肉体を見せる。特に裸になるのが必要な場面ではない。裸を見せるための裸だ。ビョンホンは「アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン」でも「G.I.ジョー」でも裸の上半身を見せるが、この作品の裸が一番切れ味鋭い。そして、本作での悪役が最も輝いている。

 疾走する馬上でチョン・ウソンがライフルを回転させながら撃つ場面も見ものだ。ソン・ガンホはベテランらしいこなれた演技でお笑い部分を引き受けている。

 しかし、この映画には何か欠けるところがある。それは、レオーネのウエスタンにあったロマンチシズムではないだろうか。

 レオーネのウエスタンは一方の極からもう一方の極へ、その振り幅の大きさが魅力だった。それは残酷とユーモアであり、極端なアップとロングであり、リアリズム(現実主義、金、今そこにある欲望)とロマンチシズム(理想、プライド、未来への希望)であった。リアリズムとロマンチシズムの対比は、アップとロングの対比と相関関係にある。リアリズムが強調される場面では、欲望にぎらつく顔などのアップが使われ、ロマンチシズムが強調される場面では、荒野の風景のロングが使われる。風景を描くロングの場面はある程度の尺が必要となり、セリフもかぶせにくいので、音楽が使われることになる。そこでエンニオ・モリコーネの音楽が、さらにロマンチシズムをかき立てる。

 韓流ウエスタンの本作には、残酷とユーモアはあるが、ロマンチシズムが希薄だ。アップばかりでロングが少ない印象を受けるのはそのためかも知れない。その代わり、冒頭の列車強盗の場面など、手持ちカメラでの撮影で臨場感を出している。ストーリーは荒唐無稽だが、良くも悪くもリアリズムの映画なのだ。もちろん、娯楽作品としては十分に楽しめる。だが、何かが足りないとすれば、それはレオーネのウエスタンにあったロマンチシズムだろう。

関連DVD・商品

B002SSSUH2

グッド・バッド・ウィアード コレクターズ・ボックス

  • 監督:キム・ジウン
  • 出演:イ・ビョンホン, チョン・ウソン

グッド・バッド・ウィアード コレクターズ・ボックス(3枚組)【初回限定生産】 [DVD]の情報を詳しくチェック!

小梶勝男氏 高得点批評

クヒオ大佐

「日本人なのにアメリカ人と名乗って女性を騙した実在の結婚詐欺師を、堺雅人が付け鼻と片言の日本語で演じる。岡本喜八作品にも通じる映画らしい映画(90点)」

この映画の批評を読む »

サイドウェイズ

「米映画「サイドウェイ」を日本人キャストでリメーク。四人の主人公たちを日本人に変えたことで、オリジナルよりもしっくりと来る作品になった(75点)」

この映画の批評を読む »

戦慄迷宮3D THE SHOCK LABYRINTH

「日本初のデジタル3D実写長編映画は、清水崇監督のスリラー。富士急ハイランドのアトラクション「戦慄迷宮」の映画化だが、3Dによる心理描写など意欲的な試みが評価出来る(74点)」

この映画の批評を読む »

人気批評ランキング

注目の映画

批評のバックナンバーをチェックする »

映画ジャッジ! DVD 人気ランキング(3月7日週)

『1位:サマーウォーズ

  • 監督:細田守
  • 出演:神木 隆之介, 桜庭 ななみ

このDVDの批評 »

『2位:ワイルド・スピードMAX

  • 監督:ジャスティン・リン
  • 出演:ミシェル・ロドリゲス, ジョン・オルティス

このDVDの批評 »

『3位:マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)

  • 監督:ケニー・オルテガ
  • 出演:マイケル・ジャクソン

このDVDの批評 »

『4位:20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗 豪華版

  • 監督:堤幸彦
  • 出演:唐沢寿明, 豊川悦司

このDVDの批評 »

『5位:96時間

  • 監督:ピエール・モレル
  • 出演:リーアム・ニーソン, ファムケ・ヤンセン

このDVDの批評 »

『6位:2012 ブルーレイ&DVDセット

  • 監督:ローランド・エメリッヒ
  • 出演:キウェテル・イジョフォー, ジョン・キューザック

このDVDの批評 »

『7位:カムイ外伝

  • 監督:崔洋一
  • 出演:松山ケンイチ, 小雪

このDVDの批評 »

『8位:ウルヴァリン:X-MEN ZERO <2枚組特別編>〔初回生産限定〕

  • 監督:ギャヴィン・フッド
  • 出演:ヒュー・ジャックマン, リーヴ・シュレイバー

このDVDの批評 »

『9位:グラン・トリノ

  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 出演:クリント・イーストウッド, ビー・バン

このDVDの批評 »

『10位:沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組)

  • 監督:若松節朗
  • 出演:渡辺 謙, 三浦友和

このDVDの批評 »