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処刑山 デッド卍スノウ

◆タイトルはシリアス風だが実は爆笑スプラッターホラー。後半の残酷描写はかなり派手で、笑える場面もたくさんある。この手の映画が好きな人にはお薦めだ(66点)

処刑山 デッド卍スノウ

© 2009 MIHO FILM AS All rights reserved

 本作は「高名な霊媒師」の忠告によって、マスコミ試写を行わないという。じゃあどうやって見たのかというと、単にサンプルのDVDを取り寄せたのだが、子供っぽいギミックが、何だかワクワクするではないか。珍しい北欧ノルウェイのゾンビ映画で、「ノルディックホラー」を謳い、チラシには「ノルディック呪いディック」なんて書いてある。ダジャレとしては苦しいが、とにかく楽しそうな雰囲気は伝わってきた。

 「処刑山」というタイトルからは「変態村」(2004)などを想像し、シリアスで重い雰囲気の映画のように思えるが、それは全くの間違いだ。残酷場面が満載の爆笑スプラッターなのである。

 ノルウェイ人医学生の男女8人がバカンスを過ごしに雪山の小屋にやってくる。だがそこは、第2次世界大戦末期、残虐の限りを尽くしたナチス兵たちが眠る、呪われた場所だった。

 当然、冷凍ゾンビとなったナチス兵たちが医学生を襲うわけだが、このゾンビたちは、ジョージ・A・ロメロのゾンビのように動きがにぶくない。普通の兵士と同じように走り、ナイフで襲ってくる。不気味さよりもアクション重視だ。前半はスプラッター度も低く、やや退屈。その分、後半はド派手で、ナチス兵対医学生の血まみれ内臓まみれの殺し合いをたっぷりと見せてくれる。

 この手のゾンビ映画は山ほどあるので、普通に作っても、もはや面白くはない。本作にも工夫があって、「これは今までにないだろう」という珍しい場面がいくつかある。「『内臓をゾンビに食べられている人』目線の映像」「ゾンビのはらわたをザイル代わりに崖からぶら下がっている人」「自分の内臓が木に引っかかって逃げられなくなった人」などだ。スプラッター場面は、顔面を引きちぎり、四肢を引きちぎり、首を刎ね、腕を切断し、顔面を踏み潰し、と大サービス。ラストはチェンソーや斧、ハンマー、マシンガン装着のスノーモービルなどで武装した医学生たちがゾンビ軍団を破壊しまくって爽快だ。舞台の雪山も、スプラッター描写に効果的に使われている。

 ゾンビに噛まれた医学生が自分もゾンビになってしまう、と恐れるのだが、仲間から「お前、ユダヤ人の孫だろ。いくら何でもナチスのゾンビの仲間には入れてもらえないよ」と言われるところが面白かった。ナチス・ゾンビに立ち向かうユダヤ人医学生たちは、ゾンビ界の「イングロリアス・バスターズ」(2009)でもある。他にも笑える場面がたくさんあった。この手の映画はエロも「お約束」として描かれるが、本作でもトイレの中でのセックスシーンがあって、妙に生々しい。

 監督はトミー・ウィルコラ。「キル・ビル」のパロディで頭角を現した、とある。全く知らない人だが、センスを感じさせる場面もあった。一面の雪の中、小さなテントの明かりだけが浮かび上がり、テント越しに血まみれの死体の影が見える。なかなかムードのある場面だった。俳優たちも日本にはなじみがないが、女優陣はそれなりに美人ぞろいといえる。チェンソーでナチス・ゾンビと戦う男は、最初はそうでもないのだが、血まみれになるにつれ、「死霊のはらわた」シリーズのブルース・キャンベルに似てくるのが可笑しい。

 ナチス・ゾンビを扱った作品としては、ユーロ・トラッシュの帝王ジェス・フランコの「ゾンビの秘宝」(1981)、そのフランコが途中で降板して代わりにジャン・ローランが撮った「ナチス・ゾンビ吸血機甲師団」(1980)などを思い出すが、それぞれサハラ砂漠のオアシス地帯、フランスの田舎町の湖が舞台だった。砂漠、湖ときて本作が雪山を舞台にしていることに、何かジェス・フランコ作品を意識しているような印象も受けるのだが、どうだろうか。

 それにしても、最近は珍しい国のゾンビ映画が目立つ。本作はノルウェイだが、「ギリシャ・ゾンビ」(2005)、「パキスタン・ゾンビ」(2006)なんてのもあった。元々ゾンビはハイチのブードゥー教の蘇る死者だったわけだが、ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)以降、吸血鬼の要素が加えられ、現在はそちらのイメージの方が主流になっている。前者を「ブードゥー・ゾンビ」、後者を「モダン・ゾンビ」と呼ぶ人もいる。「ゾンビ」というハイチの化け物が世界共通のキャラクターとなり、こうして様々な国で映画が作られるようになったのだから、ロメロはやっぱり偉大だと思う。もはや、ゾンビは「世界共通語」なのだ。

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