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リリィ、はちみつ色の秘密 - 町田敦夫

◆ダコタの成長物語がオバマの登場とシンクロ(70点)

 人種差別が色濃く残る1960年代の米国南部を舞台に、心に傷を抱えた少女リリィの、ひと夏の冒険と成長を描いた感動作だ。白人女性作家スー・モンク・キッドの処女長編を、黒人女性監督のジーナ・プリンス=バイスウッドが脚色。かつての“神童”ダコタ・ファニングが実年齢と同じ14歳のヒロインに扮し、この年齢層特有の不安定な立場や鬱屈した心情を体現してみせる。

 物語の縦糸となるのは、4歳の時に母親を誤射した過去を持つ少女が、その罪悪感を自分なりに消化し、再起するまでの心の軌跡だ。愛情を見せない父親との暮らしの中で、リリィは亡母の面影を心のよりどころにしていたが、「ママはお前を捨てようとした」と父親に聞かされた日、彼女は思わず家を飛び出す。

 物語の横糸は、養蜂家の黒人3姉妹と、その家に転がりこんだリリィとの奇妙な共同生活だ。白人の闖入者を広い心で包みこむ長女(クイーン・ラティファ)、独立心旺盛な次女(アリシア・キーズ)、心を病んだ繊細な三女(ソフィー・オコネドー)と個性は三者三様。それぞれの疑似家族との触れ合いの中で、リリィが確かな成長を果たしていく様が心に染みる。

 リリィと行動を共にした家政婦のロザリン(ジェニファー・ハドソン)を含め、そうそうたる“歌手”が顔をそろえたわけだが、キャストが歌うシーンは1ヵ所のみ(しかもアリシア・キーズはそれを止める側だ)。ちょっと惜しい気もするが、おそらく監督は歌を売りにする映画にする気はなかったのだろう。尊重するしかあるまい。

 黒人へのリンチや不当逮捕のシーンもあるこの作品が全米公開されたのは、昨年10月のことだった。黒人の血を引くバラク・オバマがアメリカ大統領に選出されたのは、そのわずか半月後だ。ロザリンを連れたリリィが食堂に入るのをためらう一幕などは、オバマの就任演説の中にあった「60年足らず前なら父は地元の食堂に入れなかったかもしれない」という一節と呼応し、とても偶然とは思えない。アメリカという国がほんの一世代の間に経験した大きな「チェンジ」を実感させてくれる、本作はそんな映画でもある。

町田敦夫

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