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映画は映画だ - 町田敦夫

◆映画界を舞台にしたキム・ギドク原案のメタフィクション(80点)

 韓流ブームが去ったと言われて久しい。確かにひと頃のヨン様やイ・ビョンホンに匹敵するような人気者は、さすがに日本では生まれなくなった。だが、ストーリーを生み出す力に関して言えば、韓国映画界にはまだまだ底知れぬポテンシャルが隠されているように思う。それを実感させてくれるのが、たとえばこの『映画は映画だ』のような作品だ。

 暴力的で高慢な映画スターのスタ(カン・ジファン)と、俳優になりたかったヤクザのガンペ(ソ・ジソプ)。出会うはずのない2人の運命がひょんなことから絡み合い、決闘シーンをガチンコ勝負で行うことを条件に、スタの主演映画にガンペが客演することに。楽屋では満腹の野獣同士のように牙を隠している2人だが、いざカメラが回り始めると段取りを無視して大暴走。あわや一触即発かと思いきや、カットがかかれば不思議と脚本の枠内に事が収まっているあたりの呼吸は見事なものだ。

 観ているこちらにはスタとガンペの行動のどこまでが「演技」で、どこからが「素」なのかさっぱりわからないが、一方でカン・ジファンとソ・ジソプは脚本に添ってそういう「演技」をしているわけで、その二重構造まで視野に入れると、本作の面白みがさらに増す。劇中劇の監督に扮したコ・チャンソクも、ヤクザにビビりながらもガンペをシレッとこき使う、何とも味のあるキャラクターを形っている。

 撮影を離れた私生活の部分でも、ガンペが組織の内部抗争に命を張ったり、スタが恋人との密会写真をネタに脅迫されたりと波瀾万丈。注目すべきは、裏社会にどっぷり浸かっていたヤクザと、天狗になっていた俳優が、互いの存在を触媒に、生き方を徐々に変えていく点だ。劇中劇の最後を飾るのはスタとガンペのガチンコ勝負。「結末は変えるな」と釘を刺す俳優と、「お前が勝てばいいだけさ」とうそぶくヤクザが、泥まみれの壮絶なバトルを展開する。

 すべての撮影が終わった後のエンディングもまた印象的だ。見下していたガンペにいつしか友情さえ感じ始めたスタの前で、ガンペはしかし「ヤクザはしょせんヤクザだ」「俳優はしょせん俳優だ」と言わんばかりの暴挙に出る。ここに至って、多くの観客は『映画は映画だ』というわかったようなわからないようなタイトルの本当の意味を知るのである。監督のチャン・フンは鬼才キム・ギドクの下で助監督を務めていた人物。恩師の原案を脚色し、ギドクの作品以上にエンターテイニングな一作に仕上げた功績は大きい。

町田敦夫

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