この映画の長所と短所は、共に藤原竜也の存在だ。陰謀に巻き込まれた主人公が、仲間や恋人の復讐に立ち上がるクライム・アクション。故・松田優作を想定して書かれたという主人公は虚無的で危険な男だが、耐えた末に爆発する展開は昔のヤクザ映画と同じで古臭い。いっそSFにでもすれば面白かったか。藤原竜也は舞台で鍛えた演技とアクションが見事だが、力み気味の芝居が浮いてしまうのもまた事実。この俳優は使い方が難しい。
カメレオン - 渡まち子
クライマーズ・ハイ - 福本次郎
怒号が飛び交い、ニュース速報に聞き入り、記者が走り回り、電話がひっきりなしに鳴る。空前の大惨事が目と鼻の先で起きたときの地方新聞社編集部のあわただしさがリアルに再現される。アドレナリン濃度が上がり、誰もが疲れや眠気を忘れて駆けずり回る。その一方で興奮の輪から離れたところから醒めた視線で見つめる古参たち。さらには広告部や販売部との確執や軋轢。映画はジャンボ機墜落事故の全権デスクを任された記者を中心に、関わった人々のさまざまな感情を描く。しかし、この「お祭り騒ぎ」の先に何があったのか。事故原因を最初につかんでいたのは地元紙だったと言いたかったのだろうか。所詮は全国紙や共同通信・NHKなどには太刀打ちできない主人公の徒労感・無力感だけは伝わってきたが。
純喫茶磯辺 - 福本次郎
父と娘、ふたりの時は仲良く話すのに、別の人間が入り込んで3人になるととたんに気まずい空気に変化してしまう。それは父が知らない娘の恋だったり、娘が知らない父の世界を見せられるから。ふたりきりで暮らしてきた不可分の間柄に他人が入り込むことの違和感が、非常にリアルに張り詰めた雰囲気をかもし出す。映画は今まで知らなかった、「働く父親」の姿を目の当たりにした娘が大人の事情を知り人生を学んでいく過程を通じ、理想的な父娘関係をコミカルなタッチで描く。
純喫茶磯辺 - 渡まち子
ダメ人間たちを描く悲喜劇だが、完全にツボが違ってしまい最後までノレなかった。思いつきで喫茶店を始めたぐうたら親父としっかり者の娘の日々を描く。個性的な客は一瞬芸的に描かれるだけで面白味を感じるまでには達していない。最近流行のカフェ映画の好感度の源は、なごむこと。その意味で、この作品は別ジャンルだろう。10代のヒロインの目線で描くので幸福も不幸も不安定なのはリアル。閉鎖した磯辺の前で涙ぐむ場面は印象的だ。
ハンコック - 岡本太陽
アメリカのドル箱スター、ウィル・スミス。昨年の独立記念日公開作品は『トランスフォーマー』で、彼は出演していないが、ウィル・スミスな独立記念日公開作品の常連。『インデペンデンス・デイ』『メン・イン・ブラック』『メン・イン・ブラック2』等の大ヒット作品がその日に公開を迎えている。そして 2008年の独立記念日にまたもやウィル・スミス主演映画『ハンコック(原題:HANCOCK)』が公開を迎える。
ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌 - 前田有一
前作『ゲゲゲの鬼太郎』(07年、日本)が予想を上回る大ヒットを記録したため、比較的スムースにこの続編は実現したようだ。鬼太郎役のウエンツ瑛士はじめ、主だったキャスト・スタッフは同じ。原作を実写変換するのではなく、あえて役者の個性を思い切り前面に押し出すコンセプトも変えていない。守りを固めた、手堅い布陣のパート2といえるだろう。うまくいっているものは大きく変える必要はない。戦略立案の基本である。
ホートン ふしぎな世界のダレダーレ - 前田有一
私はこれを日本語吹き替え版の試写で見たが、さすがに歌の場面はオリジナル音声を聞きたいと思ったものの、全体的には満足のいくものだった。森川智之&雨蘭咲木子という『ダーマ&グレッグ』でおなじみの二人をはじめとする、専門の声優で固められた日本語版キャストの実力によるものであることは疑いない。
近距離恋愛 - 前田有一
『近距離恋愛』は一見よくあるラブコメだが、その内容はいかにもリセッション時代のアメリカらしいもので、大変興味深いものがあった。
いま ここにある風景 - 前田有一
『いま ここにある風景』は、いまの中国のとんでもない実態を自らの目で見たい人にはたまらない一品である。
庭から昇ったロケット雲 - 渡まち子
子供にも大人にも夢は大切。だがこのドラマの夢はあまりに現実味に欠けるので、信じたくても無理だ。宇宙飛行士の道を断たれた農場主が自作のロケットで宇宙へ挑む。ロケット作りが全くの絵空事ではないのが21世紀だが、問題は費用と技術力。やんちゃな大富豪が主人公なら説得力が出たかもしれない。何よりビリー・ボブ・ソーントンはアクが強すぎてミス・キャスト。この映画からは家族愛よりも“無茶は禁物”ということを学んでしまった。
白い馬 - 佐々木貴之
◆少年と馬による夢のような友情ストーリー(100点)
少年とロバの冒険を描いた劇場用映画『小さなロバ、ビム』(49、日本未公開)でデビューした今は亡きアルベール・ラモリスの監督第二弾作品である本作は、再び少年と動物をメインキャラクターにした物語である。1953年にカンヌ国際映画祭の短編作品賞をはじめ、ジャン・ヴィゴ賞等の数多くの賞を受賞した。日本ではビデオがリリースされたが、既に廃盤となっており、DVDもリリースされていないため“絶滅危惧映像”となっていた。だが、2007年にラモリス監督が本作の四年後に完成させた『赤い風船』(56年度カンヌ国際映画祭短編作品賞受賞)とともにカンヌ国際映画祭に再び出品され、称賛されたことから2008年に両作品のリヴァイバル上映が決定し、二つの名作がスクリーンに甦ることができたのである。しかもデジタルリマスター版として映像が一新されたというオマケ付でのことだ。
クライマーズ・ハイ - 渡まち子
熱いブンヤ魂が胸を打つ、ハイテンポな社会派ドラマ。描くのは、1985年の群馬での日航機墜落事故直後の、地元新聞記者たちのスリリングな一週間だ。激しいセリフの応酬とめまぐるしいカット割が未曾有の大事故と社内のカオスを体現して効果的。原田眞人は隠れ娯楽派で、つい盛り沢山になるのが難点だが、社長との擬似父子関係は効いていた。登場人物が多いので人間描写は物足りない。それでも堤真一をはじめ役者の演技は絶品。
火垂るの墓 - 福本次郎
両親も住む家もすべての財産も戦争に奪われてしまった少年と幼い妹。日本人全員、生きていくことに精一杯だった時代に、2人の面倒を見てくれる大人はなく、行き場を失った兄妹は運命に押しつぶされる。空襲で身近な人が死に、黒焦げになった死体を片付けるシーンに、もはや遠くなりつつある戦争の記憶がリアルに再現される。飢えだけでなく死もすぐそばにあったのだ。映画は人間の命など蛍の光ほどに儚いものであるという現実を反映し、孤児となった少年の感情を繊細に描く。
庭から昇ったロケット雲 - 福本次郎
子供のときは「夢を持て」といわれるのに、大人になっても夢を追い続けていると変人扱いされるのはなぜだろう。いい加減あきらめろとか家族のことを考えろとか、周囲の人間は夢から目を覚まさせようとする。「歴史は学ぶより作るべきだ」という主人公の言葉に象徴されるように、後世に名を残したのはみな夢をあきらめなかった人たち。映画は自作のロケットで宇宙に飛び出そうという途方もない計画を持った男が実行に移す様子を通じて、子供たちにそのメッセージを伝えていく。
スピード・レーサー - 渡まち子
愛車“マッハ5”を操るスピードは、怖いもの知らずの天才レーサー。かつてレース中の事故で命を落とした兄は目標であり誇りだ。だが、レース界の陰謀に巻き込まれたスピードは、兄の命を奪った超難関ラリーに挑むことに…。




























