◆リアリティ以前に生きている実感がない(30点)
気持ちはいいが中身がない。それって映画としてどうなのか?! と問いかけたくなる作品だ。大学生のさよは、タイの古都チェンマイのゲストハウスで働く母の京子を訪ねる。自分や家族を置いてタイに渡った母は、ゲストハウスのオーナーやタイ人の少年、ハウスを手伝う青年らと楽しそうに暮らしている。そんな母の姿を複雑な思いでみつめるさよ。物語は、それぞれに事情を抱えた5人の男女の6日間を、さらりとした空気の中で描いていく。
暑い国なのに温度を感じない世界、草食系の俳優たち、表面をなぞるだけの人間描写。リアリティ以前に、生きている実感がない。それを象徴するのが、ゲストハウスにあるプール。波風ひとつたたず、ひたすら静かな水面は、極端に清潔でゴミひとつ浮いていない。これが海ならどうだろう。波もあれば、生物だっている。時には危険もあるが、泳いでどこかへ行く目的も生まれる。プールの周辺に集う人々は、互いに傷付けない代わりに真の絆も求めていない。登場人物たちは、人が踏み込まない、バリアをはった自分の世界が快適なようだ。「好きなことをする方がいいと思う」とのセリフがあるが、好きなことをすることと、嫌いなことをしないことは別問題で、生活や人間関係から逃げた先に“好きなこと”があるのだろうか。おしゃれなゲストハウスやおいしそうな食べ物、ゆったりとした歌声などに気分は癒されるが、根底に漂うのは、希薄な人間関係で充足する薄ら寒い空気。この映画、かなり病んでいる。





























