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幸せはシャンソニア劇場から - 渡まち子

歌手志望の娘・ドゥースが歌うナンバーが見事(70点)
幸せはシャンソニア劇場から

© Cos Aelenei

 音楽ものを得意とするクリストフ・バラティエ監督が描くのは、音楽を愛し生活に浸透させて生きるごく普通の人々。そのためか、まなざしがいつも温かい。1936年、第二次世界大戦勃発前夜、パリの下町の人々から愛されるミュージック・ホールのシャンソニア劇場は、経営不振で閉鎖されることに。幕引き係ピゴワルは、妻に逃げられた上、劇場が閉鎖になれば失業して愛する息子ジョジョとも引き離されるため、仲間と共に劇場を取り戻す決心をする。

 音楽エンタメ映画かと安心していたら、主人公が殺人犯として警察にいる場面からスタート。いったいこの善良そうな中年男に何があったのかと思わず引き込まれる。回想形式で語られる物語は、父子の絆、愛し合う恋人同士、芸人たちの心意気などの味わい深いドラマだ。華やかでノスタルジックな音楽が下町の空気とミックスされ、不穏な時代でも明るく生きるパリの人々の思いを感じさせる。印象的なのは戦争や政治とは別の次元でたくましく生き抜く庶民の姿。世相が変わるたびに「??風シチュー」と看板メニューの名前を変えながら店を守る主人がその代表だ。シャンソニア劇場とはそんな彼らにひと時の夢をプレゼントする場所。懸命に守ろうとするのも頷ける。キャストが歌う多くの楽曲が魅力的で、特に歌手志望の娘・ドゥースが歌うナンバーが見事だ。加えてジョジョ坊やの可愛らしさも忘れ難い。アパートの下でジョジョが歌い、父と再会する場面では、涙ぐんでしまった。赤い緞帳が開けば、人生という名の劇場で精一杯輝く人々の姿がある。何だか見ているこちらまで勇気付けられた。

渡まち子

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