無国籍なムードを漂わせる国際派女優マギー・チャン主演の人間ドラマだ。ロックスターだった夫をドラッグの過剰摂取で亡くしたエミリーは、自らも麻薬所持で逮捕され、幼い息子ジェイの養育権を奪われる。出所後パリへと向かい、息子のために人生をやり直そうと決意する。
実際、この物語のヒロインは、どうしようもないダメ母だ。自らも時に薬に依存し、息子を愛してはいるが育児能力はない。なのに息子との暮らしと歌手としての成功を同時に望む身勝手さだ。プライドが高く、地道な仕事が続かない彼女に感情移入は難しいはず。だが、映画はそんなヒロインを否定も肯定もせず、淡々と追っていく。緊張感が高まるのは、エミリーとジェイが2日間だけ一緒に過ごすときにガチンコでぶつかりあう場面。これは大人と子供や親と子の会話ではなく、人間同士の本音の叫びだ。子供を社会の庇護の下に置こうとする日本や、やたらと自由を尊重する米国とは違う、欧州の価値観を、香港出身のアジア人マギー・チャンが演じるところに面白さがある。エミリーの歌手としての才能が感じられないのが残念だが、妻や母である前に自分に正直な人間であろうとする主人公の生き様は強く印象に残る。
(渡まち子)
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