映画ファン待望の電子書籍(スマートフォン向けアプリ)

ノーボーイズ,ノークライ - 渡まち子

さわやかな余韻を残してくれる(70点)
ノーボーイズ,ノークライ

© 『The Boat』フィルム・コミッティ

 孤独、絶望、怒り。何もかもがグチャグチャに混ざって出口さえ見えない。だが、どうしようもない状況の中にも必ず希望はあると、この不思議な手触りのドラマは教えてくれる。韓国人ヒョングは古いボートで海を渡る違法の運び屋。ヤバそうな荷物を海岸で受け取る日本人青年の亨はいつも無愛想で何を考えているのか分からない。ある日、いつもと違い、少女を運ぶ依頼を受けた二人は、彼女の父親探しに巻き込まれてしまう。

 裏社会の下っ端同士の二人の青年が共有するのは、捨てたくても捨てきれない家族への思いだ。亨は自堕落な妹や病気の甥、痴呆の祖母を抱えて身動きがとれず、いっそ家族などいなければ…と願うことも。一方、ヒョングは親から捨てられ家族の意味さえ知らずにいるが、それでも僅かに残る母の記憶を心にしまっている。そんな彼らが互いの孤独を知り、分かり合っていくプロセスは、悲痛なのにどこかユーモラスな青春物語の風を感じさせ、脚本家渡辺あやの鮮やかな手腕を印象付けた。見終わってさわやかな余韻を残してくれるのは、心優しい“人魚”が最後に現れるため。膨大な韓国語のセリフをこなした妻夫木聡の表情がとてもいい。

渡まち子

スポンサードリンク