◆作り手のまなざしがあたたかいヒューマン・ドラマの佳作。欠点だらけの家族を応援したくなる。(70点)
シングルマザーの姉ローズとフリーターの妹ノラは、生活を立て直そうと、ワケありの清掃業を始める。犯罪や事件の現場をクリーニングするその特殊な仕事に、最初はとまどいながらも何とか慣れていく二人だったが…。
負け組。イヤな言葉だが、この物語の主人公・ローズを端的に表すには最もふさわしい。ハイスクール時代は学園のアイドルだった彼女だが、30歳を超えた今では、他人の家の掃除専門の仕事をしながら一人息子を育てるシングルマザー。かつての恋人とはズルズルと不倫関係を続けている。高校時代の栄光からはほど遠い日々だ。父親は一攫千金を狙っておかしな商売に手を出すし、妹はキレやすくバイトさえ続かない。幼い息子は問題児扱いされて小学校を退校に。こんながけっぷち人間を、負け組と呼ばずして何と呼ぼう。
だが、お天道様はローズを見捨てはしなかった。高額のギャラが稼げる事件現場の清掃は、いわゆる隙間産業。この奇妙な仕事が人生の転機となる。まるっきり素人の姉妹は、血と異臭漂う現場で仕事のノウハウを覚え、少しずつ変化していく。ヤバそうな商売だが物語に犯罪の香りはない。その代わり、常に寄り添う死の気配は、姉妹のトラウマである亡き母の記憶を呼び覚ますことに。そんな時、ノラが不注意から依頼先の家を全焼させる。トラブルばかり起こす妹にローズの怒りは爆発。ノラの不満も噴出し姉妹はケンカ別れしてしまう。
またしても行き詰るかに見えたが、この大喧嘩こそが二人に必要なカンフル剤だった。結婚も仕事も成功したかつてのクラスメイトへのローズの見栄と、自殺した母の記憶から他人との関係に臆病なノラの意地。どちらも褒められたものではないが、映画はこんな二人を責めたりしない。それどころか、本音でぶつかりあった後、姉妹が歩み寄り絆を深めていく展開は、作り手が、不器用な彼女たちに「君は一人じゃないんだよ」と励ましているかのよう。特に、ツイてない人生で心が頑なになっていたローズが、車の無線で亡き母へと語りかけるシーンは、長年のわだかまりが夜空に溶けていくようで心に残る。
ただ、脚本にはほころびも。まず姉妹を助ける掃除道具屋が片腕という設定が物語にほとんと活きてない。特殊な外見ではなく、冴えない男の優しさがあれば十分なのに。ノラが、遺品を渡すために近付いた女性リンと分かりあえなかったのも気になるところ。それでも、清掃の仕事と、母親の死という心の染みを“クリーニングする” 二重の浄化に免じて不満はきれいに洗い流そう。
この映画の手触りは、厳しい現実と戦いながら懸命に生きる人間を明るく描いた名匠フランク・キャプラを思わせる。アメリカ映画は、キャプラスク(キャプラ特有の楽観的ヒューマニズム)を現代風にアレンジし、ちゃんと受け継いでいるのだ。サンシャイン・クリーニングとは、ローズが始めた清掃会社の名前。いろいろあったけど、見上げれば今日も太陽は輝いている。サンシャインという言葉には日光、日差しの他に「幸せの源」という意味があるのだそう。ローズとノラの人生にも温かなお日様が照り始めた。さぁ、しまっていこう。

























