地味だが丁寧に作られた人間ドラマだ。60歳を超えて初主演の名脇役リチャード・ジェンキンスの渋い演技が味わい深い。孤独な大学教授ウォルターは、NYでシリア出身の青年タレクと出会い心を通わせるが、タレクが突然不法滞在を理由に拘束されてしまう。9.11以降、米国は、移民や不法滞在者に対して厳しい態度をとっている。移民によって作られた国が扉を閉ざす不寛容は、悲痛なものだ。だが映画は難しい社会派ドラマには寄らず、アフリカン・ドラムのジャンベという楽器の音色に思いを託すクレバーなスタイルをとった。湧き上がるリズムと人との出会いで、主人公は生きる喜びを再び感じ始める。物語の結末は現実を反映した苦いものだが、ウォルターが地下鉄の構内でジャンベを演奏するラストに希望を見出したい。
(渡まち子)
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