◆なぜこういうことになったのかと興味をそそる導入部は上手い(45点)
長い原作の児童文学のプロローグにすぎない部分に映画1本分を使う本作、贅沢なのか無駄なのかビミョーなところだ。ごく普通の家庭で育った16歳のダレン・シャンは成績優秀で家族に愛される平凡な少年。ある日、毒蜘蛛に噛まれた親友スティーブの命を救うため、バンパイアと取引したことから、半分人間、半分バンパイアのハーフ・バンパイアになってしまう。家族の元を去り、風変わりなサーカス一座に身を寄せバンパイア修行に励むダレンだったが、バンパイア対バンパニーズという因縁の抗争に巻き込まれてしまう…。
主人公ダレンが、棺桶の中でゲームに興じながら“生き返る”のを待つ冒頭はなかなか魅力的だ。なぜこういうことになったのかと興味をそそる導入部は上手いのに、残念ながら後は退屈。不親切な人物紹介と、中途半端なファンタジーという印象しか残らない。この物語のバンパイアは、フリークスだけを集めたサーカス団の一員として平和的に人間と共存している。必要な時に人間からちょっぴり血をもらい、ほどほどに暮らすユルい存在だ。そんなハト派吸血鬼のバンパイアと対立するタカ派がバンパニーズ。この抗争の影には、争いを仕掛け、楽しんでいる謎の男ミスター・タイニーの思惑が。そして闘いの鍵を握るのが、ダレンというわけだ。渡辺謙を含め、やたらと脇役が豪華なのはいいが、肝心の主人公ダレンに強烈な個性や興味をそそる背景がなく、求心力が感じられない。面白みのない優等生、蜘蛛好きなのにろくに管理もできず、命を投げ出してまで救う親友スティーブとの絆も何だか不自然だ。原作シリーズは、怒涛の展開で、ダレンを含めた登場人物の意外な関係や思いもよらない対決が用意されている。少なくとも現段階ではダーク・ファンタジーと呼ぶほど暗さはなく、青春ドラマというほどハジケてもいない。導入部はさっさと終わらせ、ダレンとスティーブの争いや他の人物との関係を、もう少し興味をそそる形で描き込むべきだったのではないか。覚醒したダレンは刺激的な世界でどう変わるだろう。映画が終わったその先に期待するしかない。
(渡まち子)
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