◆お互いに屈折しながら歩んできた母と娘の和解の物語として味わうことができる(55点)
食に関する映画が流行しているが、これはちょっと風変わりなグルメもの。子供の頃から料理が大好きだった倫子は、レストランを開くのが夢。だが、恋人から資金を持ち逃げされ、ショックと失恋の痛手から声が出なくなってしまう。昔から折り合いの悪い母親の暮らす田舎に戻った倫子は、仕方なく母と暮らしながら、実家の物置を利用して小さな食堂を開くことに。お客は1日に一組。メニューも置かない。ユニークな“食堂かたつむり”は評判になり、いつしか倫子の料理を食べると願いがかなうという噂が広まった…。
おいしい食べ物によって心が癒されていく人々が、独特のアニメーションを使った映像で活写されるが、ヒロインはいつも寂しそうだ。お客とのやりとりからその人が望む食事を作る倫子だが、一番身近にいる母親の気持ちが分からない。自由奔放な母ルリコをいつも心のどこかで拒否しているからなのだが、ある日、倫子は母本人から末期ガンであると告げられる。衝撃を受けながらも、母のために料理を作ると決意してから、関係が変化していく。リアリティ無視で作りこんだポップな物語は、女の子好みの可愛い世界観を重視したもの。そのため、人間描写は極めて表層的で、終盤の、ペットのエルメスの運命によって命のありがたさを訴えるシークエンスも、どこまでもライト感覚だ。それでも、柴咲コウ自身が作っているという料理シーンにうそがないことや、余貴美子演じる母親のキャラが抜群に立っていることで、お互いに屈折しながら歩んできた母と娘の和解の物語として味わうことができる。料理がもたらすとされる幸せが、劇的な変化ではなく、何かのきっかけになるささやかなサイズであることが好ましい。最後に、自分のために食事を作り「おいしい」とつぶやく主人公に、ほっとする思いだ。



























