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手のひらの幸せ - 渡まち子

◆懸命に生きる兄弟の物語は郷愁を誘う(50点)

 昭和30~40年代の新潟を舞台に懸命に生きる兄弟の物語は、郷愁を誘う。健一と龍二の兄弟は、児童擁護施設・希望宛で育った。弟の龍二は養子として引き取られ、優しい養父母のもと、のびのびと暮らしていた。兄の健一は宛に残り、出稼ぎに行ったまま行方不明になった父を待ち続けるが、連絡はなく、今は大工の見習いとして働いている。龍二が大学に進学することになり喜ぶ健一だったが、龍二の入試の前日に落下事故で重傷を負ってしまう…。

 原作は、歌手の布施明が書いた童話。身寄りのない兄弟が支えあって生きる姿は、けなげで胸が痛くなるほどだ。物語は地方都市が舞台だが、出稼ぎ労働者が日本の高度経済成長を支えたとするスタンスは、時代の片隅で地道に生きた人間に目を向けたもの。そんな名もない人々を肯定するように、兄弟の周囲にいる人は、皆、優しく温かい。顕著なのは、希望宛から祖父の家に戻ろうとする冒険の旅のエピソードだ。民家の柿をとろうとして一度はとがめられるが、兄弟の事情を知った家の主が、柿とおにぎりを持たせてくれる。両手に乗せられたそれを見て、兄弟が「幸せが両方の手にのっていると涙がふけない。片方の手にのるくらいがちょうどいい」という言葉に、子供ながらに不幸が身に染み付いている諦念があり、泣けてきた。ただ、二人きりの兄弟が慎ましく生きる美談は、確かにいい話だが、現代から見ると若者らしいわがままや夢とは無縁で、遠い遠い昔話のように実感が薄い。約2時間の長編映画にするより、作者の布施明がコンサートの中で披露していたという、小さくてさりげない朗読の世界の方がふさわしいのではなかろうか。それでも、柿の木のある家とその家族との後日談が明かされると、彼らの幸せにほっこりとした気持ちになってしまうのだ。

渡まち子

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