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今度は愛妻家 - 渡まち子

◆見終わってタイトルの意味が分かり、思わずホロリとする(60点)

 平凡な中年夫婦が再出発を決意する物語は、ささやかな日常を丁寧に描く前半と後半のどんでん返しの対比が効いている。かつては売れっ子カメラマンだった北見俊介は、今では仕事もせずグウタラと暮らしている。浮気までするダメ亭主を、妻のさくらは明るく献身的に支えるが、ある日、さくらは唐突に「別れて」と切り出し、俊介を動揺させる…。

 この物語はもともとは舞台劇だ。映画には沖縄旅行のパートがあるが、それ以外はほとんどが家の中で物語が進行する。ある種のファンタジーであるこの話の秘密はここでは明かせないが、夫がポツリと言うセリフだけですべてを物語る演出は上手かった。それまでの意識的にユルい流れを一気に逆流させる技ありの一言である。豊川悦司と薬師丸ひろ子の二人は、かつて「きらきらひかる」でもワケありの夫婦役で共演しているせいか、本作でもピッタリ息があっている。特に健康オタクの妻・さくらを演じる薬師丸ひろ子の、可愛らしくて少し寂しげな雰囲気が印象的だ。ただ、余計なサブストーリーのせいでモタつくのが惜しい。北見家に出入りするオカマの正体を明かす設定はやむを得ないが、カメラマン助手の恋愛パートは不必要だろう。喪失感を抱えた夫婦の再生の物語が丁寧なので、それだけで十分だ。走っていく妻の姿を写した写真に向き合い、さくらご自慢のニンジン茶の味が本当に苦いと分かったときが再スタートの瞬間だ。見終わってタイトルの意味が分かり、思わずホロリとする。

渡まち子

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