◆ラブストーリーではないと釘をさすのが興味をそそる(75点)
センスの良さとユニークな個性を感じさせる小品である。トムは、運命的な恋を信じるロマンチスト。ある日、秘書として入社してきた魅力的な女性サマーに一目惚れしてしまう。音楽の話題で意気投合した二人だったが、サマーは、真実の愛など信じていない女の子だった。トムはサマーに夢中になり、振り回されていく…。
冒頭で、この映画はボーイ・ミーツ・ガールの話だがラブストーリーではないと釘をさすのが興味をそそる。徹底した男子目線の話であることから分かるように、これはある恋をゆっくりと咀嚼しながら自分自身をみつめていく男の子の物語だ。まず、トムとサマーの500日の日々をシャッフルし、恋愛感情をランダムにみせていく手法が面白い。括弧が付いているのは、時系列よりもトムの感情の波に沿って語っていますという意味だろう。幸せな妄想をダンスシーンで表したり、絶望感をモノクロのスケッチで描いたり、理想と現実を二分割の画面で同時進行させたりと、語り口が技ありで変化に富んでいる。凝ってはいるが、才気走っていないのは、ポップな音楽とナチュラルなセリフのせいだ。さらにキュートでエキセントリック、青い服が似合うクールなサマーを演じるゾーイ・デシャネルの魅力によるところが大きい。彼女が演じるサマーは自分勝手に見えるが、立ち位置はブレてはおらず、揺れ動くのはトムの方なのだ。幼いがしっかり者でトムに冷静な助言を与える妹の存在がスパイスとなって物語を引き締める。
草食系で夢見がちな男の子が恋する過程をコラージュして描いたマーク・ウェブ監督は、ミュージック・ビデオ出身だ。これが長編映画デビューだが、軽やかな演出に非凡なセンスを感じる。しかもライト・タッチなのに、中身は意外に骨太だったりするのだ。なぜなら、現実では、サマーに出会った多くの男子は、彼女に対して怒り、あきらめ、最後には否定するだろう。でもトムはそうはしない。終盤に彼が大人の男になっている姿をみせるのがその証拠だ。自分と異なる価値観を認めることができる、そんな大人になったトム。だからこそ、彼は、サマーを経て“オータム”を見つけることができるのだ。このラストシーンはとびきりしゃれている。
(渡まち子)
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