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海角七号 君想う、国境の南 - 渡まち子

◆「野ばら」を全員で歌う場面は、感動的だ(70点)

 日本統治下の時代の悲恋と現代の若者の恋を、今はない住所“海角七号”宛ての手紙が静かに結びつける、詩情あふれる佳作。1940年代の台湾で、若い日本人教師が台湾人女性と恋に落ちるが、終戦を迎え二人は離れ離れに。60年後、ミュージシャンの夢を諦め、郵便配達のアルバイトをしている青年アガは、古い住所「海角七号」宛ての小包を見つけ、つい開封してしまう。そんな時、アガは、日本の歌手のライブの前座に駆りだされることになるが…。

 青春音楽映画でもある本作は、台湾映画の興行成績を塗り替えたという。日本統治下の台湾は、台湾人に日本人名を付け、日本語を強要したにも係わらず、なぜか反日感情は薄い。もちろん一概には言えないが、少なくとも本作の監督で1968年生まれのウェイ・ダーションは、日本と台湾の関係を穏やかな目線でみつめている。その証拠に、伝統楽器・月琴の名手で足を怪我した郵便配達夫の老人は、シューベルトの名曲「野ばら」を日本語で口ずさんだりする。寄せ集めのバンドの成長と、台湾人青年・アガと日本人女性でマネージャーの友子の恋が軸となるが、その背景のように、遠い時代の悲恋が届かなかったラブレターを朗読する形でつづられるノスタルジックな構成だ。独特の歌声が印象的な歌手・中孝介が、日本人教師役として手紙を読み、後半には、中本人の役としてライブを披露。ソフトな歌声に癒される。ラストに、老人が歌っていた「野ばら」を全員で歌う場面は、感動的だ。やはり音楽の持つ力は素晴らしい。台湾南部の海辺の街・恒春のロケーションも魅力的だ。「自分は故郷へ向かおうとしているのか、それとも故郷を後にしようとしているのか」とつぶやく言葉が心に残る。切なくてみずみずしい恋物語を描いたこの映画を、美しい絵葉書のように大事にとっておきたくなった。

渡まち子

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