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誰がため - 渡まち子

◆デンマーク史上最大級の製作費をかけて作られた(65点)

 時代に翻弄されたレジスタンス闘士秘話は、映画化によって初めて知る人が多いはずだ。デンマークという国家は、彼らの物語を語ることで歴史を受け入れようとしているのだろう。物語の舞台は、ナチス占領下のデンマーク。打倒ナチスを掲げる地下抵抗組織の一員のフラメンとシトロンの任務は、ゲシュタポや、ナチに協力する売国奴を暗殺すること。だが、あることをきっかけに任務に疑問が生じ、自分たちは上層部に利用されているだけなのではとの疑念が急速に膨らんでいく。誰が敵で誰が味方か疑心暗鬼に苛まされる二人だったが…。

 当時の目撃証言を基に、デンマーク史上最大級の製作費をかけて作られたこの映画は、レジスタンスとして国のためにつくす人間が内と外から壊れていく心理ドラマのようだ。若いフラメンはナチスに懸賞金をかけられる中、恋人ケティがスパイでは…との疑念をぬぐえず苦しむ。シトロンは本来、妻と子供を愛する良き家庭人で、殺人行為への恐怖がある。二人は「殺し屋」だが、それぞれ別の立場から、自分たちの行為は本当に正しいのかと悩み始める。この迷いや弱さは地下活動の闘士としてよりも、本来平和を愛する一般市民である彼らの善良な面を際立たせた。だからこそ、フラメンとシトロンの壮絶な決断と最期があまりに哀しい。

 翻って考えれば、強い指導者や組織を持たない小国の哀しさが主人公たちを悲劇へ導いたのではないか。ナチス・ドイツの脅威に対しデンマークがおかれた“保護占領”という生殺しのような状況が、抵抗運動のうねりを妨げたのは事実。そこにはフランスなどで展開された華々しく力強いレジスタンスの熱気はない。映画序盤に、組織の人物を紹介する場面があるが、彼らの曖昧な立ち位置がそれを証明している。表面上の中立は、長い歴史で培った、小国が生き残る知恵なのだ。ナチズムの嵐の前でデンマークが生き残る道は、保護占領を受け入れる他になかった。それでも信念を貫いた人間がいたという物語は、国の歴史を見据えた上で誇りを取り戻すのに必要不可欠なのだろう。フラメン役のトゥーレ・リントハートと、シトロン役のマッツ・ミケルセン。国際的に活躍する二人の、切実な演技が、物語に説得力を与えている。

渡まち子

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