◆二人のやるせない感情が手に取るように分かる(70点)
日本でも人気の韓流スター、チョン・ウソンが演じる大人のラブストーリーは、ホ・ジノ監督らしい静かなタッチの佳作だ。出張で中国・四川省の成都に来た韓国人ビジネスマンのドンハは、観光名所の杜甫草堂でガイドをしている友人メイと再会する。米国留学時代、互いに恋心を抱いていた二人は再び惹かれあうが、メイにはある秘密があった。
ホ・ジノの恋愛映画は、いつもじんわりと心に染み入る。本作もロマンチックな中に、現実の痛みを描きこんで美しい物語になった。舞台を四川大地震から1年後の成都にしたのが効果的で、緑あふれる自然と地震の爪あとという相反する要素が物語を際立たせている。年老いてはいないが、学生時代のように無邪気な恋はできない。そんな二人の、微妙な距離感がいい。互いに惹かれあっているのにストレートに伝えられない感情のもどかしさは、母国語ではない英語で会話することがぎこちなさを絶妙に表している。ちょっとおくてだが誠実で無骨な男性を、チョン・ウソンが清潔感溢れるイメージで演じれば、ワケありの四川美女をカオ・ユアンユアンが重くなりすぎずに静かに表現する。特別に大げさなセリフや説明的な描写、不幸を売りにした泣きが入るわけではないのに、二人のやるせない感情が手に取るように分かるのは、ホ・ジノ映画の最大の魅力だ。とかく感情が激昂する韓国映画のラブストーリーは苦手なのだが、この静けさ、何とも好ましい。幸福を予感させるラストも何気ない演出で、メイがちゃんと自転車を使っているのがチラリと見えるのが嬉しかった。
(渡まち子)
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