◆実話に基づいているというから背筋が凍った(70点)
ヒトラーは最悪の独裁者。ファシズムなど許されない。頭では分かっていたのに、若者たちは、あっというまに独裁の魔力に取り込まれて狂気に走る。これが実話に基づいているというから背筋が凍った。ドイツのとある高校で、ベンガーという教師が、生徒と共に心理実験を行なう。それは、いくつかのルールをつくり独裁制を学ぶものだが、教師の予想を超えて独裁制に魅せられた生徒たちは、学校内外で過激な活動を行なうようになる。
タイトルのウェイヴとは、ファシズムにのめりこんでいく生徒たちの集団の名前だ。彼らが教師を指導者とするその実験に夢中になり、全体主義者になってしまうまで要する時間はわずか5日間。白いシャツとジーンズという揃いの服を身に付けるだけで、集団の団結が芽生える半面、それ以外のものを排除する思想も生まれる。簡単な服装の実験だけでこの有様だ。実験と分かっていても、教師が演じる強い指導者に従い、思考能力を失くしてい恐ろしさ。集団に守られながら、誰かの指示に従っていれば安心という短絡的な発想が独裁制の根底にあるということがはっきりと分かる。いじめられっ子の少年が独裁によって居場所をみつけ人格が激変、やがて悲劇の引き金を引くことに。実験を始めた教師でさえ、自分の内に秘めた狂気があぶり出され、すべてを阻止しようと思ったときには時はすでに遅かった。ヒトラー政権とナチズムが誕生するには、より複雑な歴史的事情があるが、誰もが悪と学んだはずのファシズムは簡単に“生きかえる”とこの映画は教えてくれる。衝撃的で恐ろしい内容だが、目をそむけてはならないだろう。この作品がドイツから発せられた意義も含めて。
(渡まち子)
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