◆カリスマ編集長の仕事ぶりに迫るドキュメンタリー(60点)
華やかな場所に見えるファッション業界が、極めて厳しい世界であることは、映画「プラダを着た悪魔」でうかがえた。本作はメリル・ストリープが演じた鬼編集長のモデルと言われるアメリカ版「ヴォーグ」誌のカリスマ編集長・アナ・ウィンターその人と、彼女の仕事ぶりに迫るドキュメンタリーだ。1年で最も重要な秋の特大号・9月号の準備に余念がない編集長アナと、ディレクターのグレイスは、何かと対立しながらも、いくつもの特集を用意し、雑誌を作り上げていく。
ボブ・カットにサングランスがトレードマークのアナ・ウィンターは、ファッション業界の絶対君主だ。アナの姿からは、仕事に対する誇りが感じられ、彼女の高い要求に応えるスタッフにもプライドがみなぎる。絶対の発言権とトレンドを見極める眼力を持ったアナは、時に冷酷とも思えるほど、部下の仕事をボツにしていく。驚くべき決断力だが、特にアートに偏ったものに厳しい。ファッションに誇りと愛情を持ちながらも、同時にそれが莫大な利益を生むビジネスであることをこの人は熟知しているのだ。印象的なのは、頻繁に意見が対立するグレイスを疎むことなく、20年来共に仕事をしている点だ。才能ある対立者を置くことで、仕事が自分の独善になるのを律している。こういう側面があるからスタッフは彼女とその実績に敬意をはらうのだろう。出来上がった雑誌は、表紙をはじめ全てが厳選されたものになった。だが、ひとつ気になることが。チェックするのが写真ばかりなのだが、さて記事は? 文章を書くのを仕事にしている身としてはそこのところがチト気になる。無論、映画に映ってないだけと信じてはいるが。アナ・ウィンターは成功した強い女性の象徴だ。「弱点は?」との問いに「娘よ」とちょっと照れながら答えた時だけ、彼女を身近に感じられたような気がする。
(渡まち子)
スポンサードリンク

















