◆日本の自動車メーカーを中国系投資ファンドが買い叩く。それは単に一企業の問題ではなく、製造業というわが国の「魂」を外国人に売り渡すこと。めまぐるしい展開と細部にまでいきわたるリアリティで、企業買収の現場を再現する。(70点)
日本の基幹産業である自動車メーカーを中国系投資ファンドが買い叩く。それは単に一企業の問題ではなく、アイデアと勤勉が命である製造業というわが国の「魂」を外国人に売り渡すこと。映画はめまぐるしい展開と圧倒的なスピード感、そして細部にいきわたるリアリティで企業買収の現場を再現する。極限までハッタリを利かせるチキンゲームと徹底的な情報戦、さらに世界中に網を広げた壮大な罠。資本主義の落とし児のような男たちが繰り広げる虚虚実実の駆け引きと、ムダをそぎ落としたエピソードは息つく間もない。NHKの底力を見せ付ける力作だ。
中国残留日本人孤児3世の劉一華が率いる投資ファンドがアカマ自動車株の公開買い付けを発表する。アカマの社長から救援要請を受けた鷲津は防衛策を練るが、劉のバックには中国政府系銀行が付いており状況は悪化の一方をたどる。鷲津は新たな資金源を求めて中東の産油国を訪問する。
「人生には悲劇が二つある。カネのない悲劇と、カネのある悲劇」。その言葉を象徴するマネーゲームの勝者と敗者のコントラストが鮮やかだ。アカマ自動車調達部で部品のように「調達」される派遣社員と、数億円の年俸を稼ぎ出す投資顧問。劉に唆されて派遣社員を組織しようとした青年が、札束を床に撒き散らすシーンが圧巻だ。劉のおかげでせっかく持てたプライドを劉によってズタズタにされ、それでも床の1万円札を拾い集める。カネで心を売り渡す「持たざる者の悲劇」と、人の心をカネでしか動かせない「持つ者の悲劇」が見事に凝縮されていた。
結局、鷲津は米国の投資ファンドにTOBを仕掛ける奇策を用いてアカマ自動車を劉から守る。米国流の利益重視型が「近代的経営」と信じ、製造ラインをおろそかにしてきた社長は解任される。夢や希望を持てる製品を作るという製造業の基本を守ることが将来につながることを、この作品はモノ作りの精神を疎かにし目先の収益にばかり走る経営者の末路と、鷲津や劉といった主人公を反面教師にして教えてくれる。





























