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ダウト -あるカトリック学校で- - 福本次郎

疑いをかけられた者は、疑わしいだけで断罪され、証拠はなくても、「確信している」という根拠で罪人に仕立て上げる女性校長。すべての人間は嘘つきという発想から、ついには己れさえ信じられなくなってしまう彼女の姿が哀れだ。(50点)
ダウト -あるカトリック学校で-

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 水に落としたインクのように、一度胸に抱いた疑惑は決して消えることなく広がっていき、疑いをかけられた者は、疑わしいだけで断罪されていく。確固たる証拠はなくても、「確信している」という根拠でいかなる釈明も許さず他人を罪人に仕立て上げる女性校長の下、自由のない生活を強いられる生徒と職員たち。彼らの葛藤を通じて、人を信用できない人間はいかに不幸であるかを物語る。根底にあるのは性悪説。すべての人間は罪作りで嘘つきといった発想から逃れられず、ついには己れさえ信じられなくなってしまう校長の姿が哀れだ。

 厳格なしつけを実践する神学校の唯一の黒人生徒・ドナルドとフリン神父の秘密を目撃したシスター・ジェームスは、アロイシス校長に報告する。進歩的なフリンを嫌っていた校長は、これを機にフリンの失脚を図り、「不適切な関係」を認めさせようとする。

 怠惰や無作法、言い訳を一切許さない校長は、学校内のあらゆる事象に目を光らせている。そこにはもはや聖職者や教育者の慈愛の視線はなく、あら捜しをする姿は魔女狩りのようだ。だが、校内で絶対権力者として振舞ってはいるものの心を許せる相手は一人もおらず、孤独がさらに彼女の疑心暗鬼を増幅させている。舞台は1964年のニューヨーク、おそらく彼女は黒人の公民権に対しても胸中では反対で、ドナルドの存在を快く思っていないはず。神に仕える身でありながら、どのように振舞えばよいのか自信がないのが彼女の本心ではなかったのだろうか。強がりはその裏返しなのだ。

 結局、校長はフリンに「不適切な関係」を認めさせ、彼の追放に成功するが、その過程でフリンにカマをかけたことをジェームスに告白する。嘘を禁じた自分がついた嘘。最後に校長は自家撞着におちいり、後悔を口にする。このあたり、大量破壊兵器があると思い込みイラクに戦争を仕掛けたブッシュ政権を強烈に皮肉っている。ならば校長にも目に見える形の報いを受けさせて欲しかった。

福本次郎

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