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ダイアナの選択 - 福本次郎

今なおたびたび起きるキャンパスでの銃乱射事件。犯人と対峙したときの行動が、その後の人生を決定的に変える。平凡な家庭を持つという願望、失われた青春は永遠に時間が止まったまま、そんな普通の幸福すら経験できないのだ。(60点)
ダイアナの選択

© 2008 2929 Productions,LLC

 今なおたびたび起きるキャンパスでの銃乱射事件。犠牲者と助かった者の差はなんだったのか。親友同士の2人、「どちらかを殺す」と犯人に脅されたときにとった彼女たちの行動が、その後の人生を決定的に変えていく。ストーリーは現在と過去、さらには未来へと舞台を変え、命の尊さを問う。夫と娘、多少の波風は立っても、平凡な家庭を持ち維持するのが人にとっていかに大切なことか。失われた青春は永遠に時間が止まったまま、そんな普通の幸福すら経験できないのだ。

 ダイアナは夫・娘と高級住宅地に住み、美術講師の職も得て、ほぼ充足した生活を送っている。しかし、高校時代に起きた銃乱射事件のトラウマに時折悩まされ、仲のよかったモーリーンの記憶に胸を痛めている。

 娘の送迎、夫との何気ない会話、学校での授業といった日常の風景はどこか少し歪んで見える。それはダイアナの精神状態が不安定ないせい。一方、若さと輝きに満ちた高校時代は友人に恵まれ、かなり素行不良ではあるが凶悪犯罪に手を染めるほどではなく、典型的な地方都市の女子高生といった風情がシャープに描かれる。ふたつの時制を行き来する展開は、山場というような盛り上がりを欠き、同じシーンが繰り返し挿入されるという思わせぶりな編集法で気を持たせるだけ。中盤はややうんざりする構成だ。

 だが、その退屈はすべてラストのどんでん返しのためにある。講演会で耳にした「良心とは、神と自然と人間の心の声」という言葉を脳裏に刻んだダイアナは、乱射犯に追い詰められたときに彼女の中に芽生えた「良心」に従う。一瞬モーリーンを見捨て、自分だけは助かろうとするが、最後には心の声を口にする。ここで物語は彼女の死の瞬間こそが現在で、家族に煩わされるシーンは叶わなかった彼女の願望だったという、これまでの映画になかった結末を見せる。人は最期に過去を振り返るというが、ダイアナは代わりに未来のビジョンを見る。それはあまりよい思い出のなかったダイアナに、バラ色といえないまでも納得のいく一生だったと実感させる神の配剤なのだ。

福本次郎

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