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天使の眼、野獣の街 - 福本次郎

あらゆる人物に目を配り隅々まで記憶し、情報の断片をもとに地を這うような調査を続け、犯罪の核心に迫っていく捜査官たち。目と足だけを頼りに悪党の居場所を突き止めていく過程から、張り詰めた現場の息遣いが聞こえてくる。(70点)
天使の眼、野獣の街

© 2007 Sundream Motion Pictures Limited

 あらゆる人物に目を配り隅々まで記憶する。鋭い観察力だけでなく先を読む洞察力、そして臨機応変の対応も求められる。情報の断片をもとに地を這うような調査を続け、犯罪の核心に迫っていく捜査官たち。彼らの任務は監視と追跡、それゆえ名前は同僚以外には知らせず、犯人逮捕という華々しい舞台も用意されていない。目と足だけを頼りに悪党の居場所を突き止めていく過程は、張り詰めた現場の捜査官の息遣いが聞こえてくるようだ。派手な銃撃戦やカーチェイスとは無縁でも、緊張感あふれる映像に思わず手に汗を握る。

 香港警察情報部監視課に配属された「子豚」は「犬頭」という上司のもと、宝石強盗団の捜査に当たる。監視カメラの記録とカードの使用履歴から一味の1人を割り出し、徹底的な張り込みが始める。

 電車にのれば乗客の特徴を覚え、怪しげな者の顔は脳裏に刻み込む。一方で自分は風景に溶け込み、決して目立つような振る舞いはしない。それはまるで、いつも見ているのに見られているほうは気付かない天使の眼のよう。街中に設置された監視カメラは撮影できても追いかけることはできない。ハリウッド映画のようにハイテクに頼るのではなく、最後にはマンパワーがモノを言うことを泥臭いまでに愚直に訴えていく。

 特に「ファットマン」と呼ばれる犯人グループの一員のアジトを割り出すシーンは秀逸。同じ階でエレベーターを降りると怪しまれるので、「子豚」はとっさに小銭を床にぶちまけて時間稼ぎするという機転を利かせる。また、「子豚」が強盗団のボス「ホローマン」を追う時、傷ついた警官の手当てをしている間に見失うが二度目は任務を優先させるなど、きちんと彼女の成長も描いている。「ホローマン」を追い詰めた時もあえてアクションに頼らず、フックに喉をひっかけて自滅させるというあっけない結末を用意することで、リアリティを強調する。全編を通じて流される感情を刺激するような過剰な音楽さえなければ、もっと完成度が高い作品になっていただろう。

福本次郎

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