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ラースと、その彼女 - 福本次郎

人間嫌いというわけではないが、基本的に1人でいることが好き。そんな独身男の妄想に周囲が話をあわせていくうちに彼が人とのふれあいもよいものだと気付いていく過程は、他人の気持ちを過剰に気にする現代コミュニティの縮図だ。(70点)

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 人当たりがよく、教会にも真面目に通い、誰にでも親切で、仕事も普通にこなす。街の人からは好感をもたれ兄夫婦も気にかけているのに、なぜか心理的な壁を作り必要以上に人とかかわろうとしない。人間嫌いというわけではないが、基本的に1人でいることが好き。そんな独身男に周囲が気を使い、彼の妄想に話をあわせていくうちに、いつしか彼は人とのふれあいもよいものだと気付いていく。主人公を見守る暖かい目とそれに応えようとする彼の姿は、まるで他人の気持ちを過剰に気にする現代コミュニティの縮図のようだ。

 会社でも自宅でも「彼女を作れ」といわれ続けているラースは、ある日ネットショップで等身大の精巧にできたリアルドールを購入する。ラースはビアンカと名づけ、ガールフレンドとして兄夫婦や地域の人びとに紹介する。

 あまりにもうるさい周りの声に、「もうほっといてくれ」という心境だったはず。ラース自身、最初からビアンカは人形だと分っているけれど、「人形を偏愛する変人」を演じることでこれ以上私生活に干渉されたくなかったのだろう。ところが、ラースが本気のフリをやめないから、兄夫婦も精神科医も幸せ芝居に付き合っていくことが彼のためだと思い直す。そうなるとラースも引き下がれなくなり本当にビアンカを愛するようになっていくのだ。皆がラースを心配し、ラースもまた彼らの心遣いを無駄にしないという、思いやりの循環が映画を心地よいものにする。

 やがて、マーゴという女性を意識し始めたラースは、ビアンカに別れを告げる決心をする。その過程もビアンカが生きているという前提で進められ、急病・危篤・そして死という順序を踏む。生身の人間を愛し精神をぶつけ合うという困難に向かって新しい一歩を踏み出すが、ラースはこれで幸せなのだろうか。結局傷ついて、また孤独に浸るようになると思うが、それでも一生誰とも心を開かない人生よりはマシという、人間を肯定的に見る作品のスタンスがすばらしい。ただ、ビアンカの扱いにかかる費用をラースの個人負担や人々のボランティア精神でまかなっているうちはよいが、救急車や病院のベッドなどの社会資本を投入するのはいかがなものか。。。

福本次郎

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