◆生玉子と紅生姜に七味唐辛子を振った牛丼、主人公の口の中に甘さと辛さとすっぱさが同時に広がる。生きていくつらさを1人で抱える彼に兄が牛丼をおごるシーンは、人生の厳しさとすばらしさを噛み締めるような味わいが絶品だ。 (70点)
牛丼に生玉子と紅生姜をのせ、七味唐辛子を振りかけて箸でかき混ぜて一気にかき込むと、主人公の口の中に甘さと辛さとすっぱさが同時に広がる。生きていくつらさを1人で抱えようとして家出した彼に兄が牛丼をおごるシーンは、人生の厳しさとすばらしさを噛み締めるような味わいが見事に描かれていて絶品だ。両親がいなくなって兄姉弟3人だけで暮らしていかなければならない、それでも一番年下の自分がしっかりして兄や姉に苦労をかけたくないという思いに、いつしか彼自身が押しつぶされそうになる。その気持ちは兄も姉も同じなのに弟は気付かない。しんどいからこそみんなで力を合わせてなければならないという兄の言葉は、時には迷惑をかけ、時には手を差し伸べる家族の絆の強さを教えてくれる。
学校から帰ると自宅が差し押さえれらていたヒロシは、兄・姉と共にホームレスとなる。公園の滑り台に住み着くが、すぐに手持ちのカネが底をつき、水で腹を膨らまし野草やダンボールを食べるようになる。そんな時、事情を知った友人の両親が救いの手を差し伸べる。
死んだ母にもう一度会いたいと思うあまり、頑張りすぎるヒロシ。自分の面倒は自分でみて、決して弱音をはかないのが母の期待に答えることだと信じている。まだ中学2年なのに大人を世話にならず何とかしようとする姿は決して悲観的ではなく、むしろ楽しそうだ。その反対に、やっと小さなアパートを借りて兄姉と3人で一緒で住みで始めてからのヒロシはどこか居心地が悪そうだ。
ヒロシには頼られれば頼られるほうもうれしいということがわからず、弟にはきちんとした暮らしをさせたいと願う兄や、また一緒にいられる時間が幸せという姉の心遣いが重荷になる。そんな、血のつながった兄姉だからこその感情なのに、まだその機微が理解できないヒロシのかたくなさが痛いほど心にしみる。人は皆、支えあって生活をしている、困ったときは誰かをあてにしてもいいんだよという優しさに満ちた作品だった。


























