蛇にピアス - 福本次郎

渋谷駅前の雑踏、圧倒的な孤独を感じるヒロイン。空虚な心は自分の命すら他人のもののような、非現実的な感情しか持ちえない。自分が何者で、どこから来てどこへ向かうのか。生きている確かな手ごたえもなく彼女はさまよい続ける。(40点)

 渋谷駅前の雑踏、圧倒的な孤独を感じるヒロイン。空虚な心は自らの命すらどこか他人のもののような、非現実的な感情しか持ちえない。そして導かれる、肉体の痛みへの快感と、それすら慣れてしまえば不感症なってしまう虚無。自分が何者で、どこから来てどこへ向かうのか。生きていることの確かな手ごたえもなく彼女はさまよい続ける。映画は哲学的・文学的な装いを身にまとっているが、要するに何も考えてずに若さを浪費しているだけのプータロー女が、退屈しのぎに全身ピアスや刺青といったちょっと変わった世界をのぞいてみましたというだけの話。いくら言葉で装飾しても彼女の底の浅さが透けて見える所が悲しい。

 クラブで顔中ピアスのアマと名乗る男と知り合ったルイは、彼の舌の先が二つに分かれていることに興味を持ちそのまま同棲を始める。ルイも舌にピアスをするためにシバという男の店を訪れ、龍と麒麟の刺青を彫ってもらう決心をする。

 愛しているといいながらセックスに興じているのに、実はお互いのことは何も知らなかったという皮肉。ルイもアマも自分を受け入れてくれる相手にただ甘えたかっただけなのだろう。一方でシバに抱かれるリアルな苦痛でルイは生を実感する、その矛盾。シバが背中に入れる刺青が完成しないようにあえて目玉を描かせないのは、シバとの関係が終わることを恐れたからだろう。やっと居場所を見つけたのにそこもまた地盤のゆるい土地に建つビルのような不安定さがルイの頭から離れない。そんな微妙な心情を語るのになぜか舌足らずな彼女のモノローグを多用する意図がよくわからなかった。

 前半、舌ピをあけ刺青を入れたルイが、商店街を歩きながら普通の日常生活を送る人々を見下すシーンがある。私はあんたたちとは違うんだという根拠のない優越感。しかしそれは才能や努力を必要としない浅薄な思いあがりでしかない。いかに理屈っぽく心理描写を重ねてもこんなバカ女に共感できるわけもなく、近い将来「やる気のない風俗嬢」としてお茶を引いている姿が目に浮かぶだけだ。。。

福本次郎