モノクロームの陰影が深い奥行きを感じさせるプロローグから、赤茶けた大地、抜けるような青空、象が泳ぐ海の透明感など光と影が折りなす原色を強調した奇跡的な色調の物語のシーン、さらにややシャープさを落とした語り部の現在。まるで芸術的な写真集のように美しい映像の連続が見るものを幻想の宇宙にいざなう。大ケガと失恋で希望を失った男が、自分の目的を叶えようとする過程で人生の意義を問いかけた果てに、精一杯がんばった事実は必ず他人に何かを伝えられることに気付く。
映画のスタントマン・ロイは撮影中に下半身に重傷を負った上、恋人を主演俳優に奪われる。ある日病院でアレキサンドリアという幼い少女と知り合い、彼女に自作の物語を聞かせる。それは5人の男の壮大な復讐譚だった。
ロイが口にするストーリーはその場しのぎで作ったようなつじつまの合わないいい加減なものなのに、アレキサンドリアは熱心に耳を傾ける。いつしか復讐の主人公はロイ自身になり、アレキサンドリアも登場人物となる。手に汗握る冒険の舞台はバラエティに富み、ピラミッドや万里の長城、タージマハルといった建造物から、広大な砂漠、真っ白な砂浜、熱帯の無人島と世界各地を駆け巡る。それらの場面の計算されつくした構図が、ひときわ背景とそこで演技する俳優たちの存在感を浮かび上がらせ、叙情的なアートを鑑賞している気分にさせられる。
ロイはアレキサンドリアに自殺用のモルヒネを盗みに行かせ上に怪我を負わせる。そこで蘇る彼女の記憶、アレキサンドリアもまた悲惨な過去を持ち、小さな心でそれに耐えて生きていることに気付いたロイは、生きる勇気を取り戻す。無声映画時代の体を張った命がけのスタントの数々、そこには確かにロイの人生が刻まれており、たとえ顔や名前を覚えられていなくても、映画にハラハラした記憶は見た人の心に残るのだ。
(福本次郎)
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