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デトロイト・メタル・シティ - 福本次郎

甘いラブソングを熱唱していた青年が、いつの間にかハードロックでスターになっていく。突飛な設定の中にも、気弱で優しい主人公の気持ちが繊細に描かれている上に、エピソードの端々にちりばめられた笑いのセンスが抜群だ。(80点)

© 2008「デトロイト・メタル・シティ」製作委員会

 ギター片手に甘いラブソングを熱唱していたい青年が、いつの間にか意に沿わないハードロックでスターになっていく。その見かけや歌の内容のギャップゆえに、誰にも打ち明けられない鬱憤が積み重なって彼を精神的に追い詰めるが、周りの人々の熱い思いに助けられて苦しみを克服する。物語は、突飛な設定の中にも気弱で優しい主人公の気持ちが繊細に描かれている上に、エピソードの端々にちりばめられた笑いのセンスが抜群。彼が自らの運命に目覚める過程を見事なコメディに昇華している。

 歌手を目指して東京の大学に進んだ崇一は、ふとしたきっかけでデスメタル系バンド・DMCのボーカル・クラウザー2世としてデビュー、人気を得る。そんな時、学生時代に心を寄せていた同級生・相川と再会するが、デスメタルを軽蔑する相川に今の仕事を明かせず苦悩する。

 いつも内股気味に歩く崇一が、クラウザーの扮装になったとたんに暴力や死、怒りや怨みを肯定する下品な人格に変身する。その切り替えがうまくいかず、クラウザーのままで崇一の素が出てしまうところが腹をくすぐる。わめいたり喜んだりするクラウザーをガラス越しに見た少女が怯えたり、遊園地の超人ショーをクラウザーがぶち壊したり、グレた弟を説教したり。最初は違和感を覚えていた崇一が、クラウザーの影響力に気付くと共に自分の人生に自信を得る姿と重なり、その成長が共感を呼ぶ。

 失恋で一度はクラウザーをやめる決意をして故郷に帰った崇一は、仲間の懇願とたくさんのファンレターに励まされ、再びクラウザーとしてマイクを握る決意をする。そこに待ち受けるのはデスメタル界の帝王・ジャック。ステージでの決闘に勝ったクラウザーが歌う崇一のラブソングが妙なミスマッチを見せまた爆笑を誘うのだが、結局崇一はクラウザーとして生きる道を選ぶ。夢を追うことは、多くのファンに夢を与えること。選ばれし才能を持つものだけに許された使命を自覚したクラウザーの勇姿はかっこいいのだが、最後のオチも忘れない。あくまでサービス精神に徹したこの映画の姿勢は非常にすがすがしい。

福本次郎

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