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アメリカを売った男 - 福本次郎

スパイをあぶりだすためにスパイするという「誰も信じるな」というルール。嘘と裏切りにまみれた諜報機関の闇、実話を基にしているため映画的なド派手演出はないが、小さな事実を少しずつ積み上げる緊張感にあふれている。(60点)

 証拠が歴然としている犯罪ではなく、機密漏えいという非常に立証が難しい行為においては、スパイをあぶりだすためにスパイするという「誰も信じるな」というルールが適用される。しかし、いくら憎むべき国家の敵とはいえ、親しい付き合いをしていれば自然と親愛の情がわく。相手の懐に飛び込み、信頼を得て、そしてやってくる破滅の瞬間。嘘と裏切りにまみれた諜報機関の闇、実話を基にしているため映画的なド派手演出はないが、小さな事実を少しずつ積み上げる緊張感にあふれている。

 FBI訓練生のエリックは長年にわたってロシアに情報を流していたハンセンの監視を命じられる。ハンセンの部下となり、彼の身辺を洗うが怪しいころはない。やがてエリックとハンセンは家族ぐるみの付き合いをするようになる。

 大胆な悪事に手を染めながらも、ハンセンは意外と抜けたところがある。もちろん簡単にはエリックに心を許さないが、一度信用すると秘密の詰まったPDAをオフィスに置き去りにしたり、大量の銃器を車のトランクに隠したりと、ITセキュリティを担当しているわりには情報管理が杜撰。そもそも、大切な郵便をエリックに任せるだろうか。このあたりの詰めの甘さが、かえってフィクションが生み出す人物像にはないリアリティをかもし出す。

 ハンセンは口は悪いがマジメな堅物、信仰も篤く妻との仲もよく、不正に蓄財している様子もない。一見、何の問題もなさそうな人物が、実は妻とのセックスを撮影するなどプライベートの恥部なども暴露されていて面白い。それに、自身の身辺調査に薄々気付きいているのに、エリックへの気持ちがハンセンの判断を鈍らせて、結局墓穴を掘る。生身の人間ゆえの思い上がりと愚かさ、すべてはエリックの目を通して描かれているが、ハンセンを演じたクリス・クーパーは見事にその微妙な感情を演じていた。

福本次郎

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