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感映画批評

色即ぜねれいしょん

◆丸々2曲をフルコーラスで採用した制作者の心意気に敬意を表したい(65点)

色即ぜねれいしょん

© 2009「色即ぜねれいしょんズ」

 仏教高校に通う高校1年生の純(渡辺大知)は、ボブ・ディランに憧れ、ギターでの曲作りを趣味にしている。文系男子の宿命なのか、学校では影が薄く、肩身の狭い思いをすることばかり。異性やロックに対する憧れと平凡な現実の差に悶々とする日々をすごしている。そんなある日、友人から「フリーセックスの島、行かへん?」と隠岐島旅行に誘われ……。

 青春映画の王道といえば、スポコン映画やヤンキー映画だが、サブカルキングであるみうらじゅんの私小説的な作品が原作とあらば、そんな王道を闊歩するわけがない。本作「色即ぜねれいしょん」には、スポコン映画のような涙ぐましい努力があるわけでも、不満を拳に込めるヤンキー映画のような熱さがあるわけでもない。描かれているのは、友情や恋愛や夢に翻弄される文系男子の(ちょっぴり冴えない)ありのままの姿。スポーツに打ち込むだけが、あるいは、非行に走るだけが青春じゃない! と声高々に宣言する文系青春讃歌だ。

 思春期とは、悩み葛藤しながらも、一つひとつの岐路で進むべき道を取捨選択する作業を学ぶ時期なのだろう。間違いや失敗は日常茶飯事で、ヘコむこともしばしばあるが、そうした"負"から何かを学び取る。大人になるための通過儀礼。大人たちが思春期にノスタルジーを感じるのは、そこに自分を大人へ押し上げてくれた「恥」や「痛み」や「挫折」があるからなのだろう。この映画には、まだ自分が"何者でもない"時期に、誰もが一度は向き合ったことのあるリアルな感情がある。たとえば、異性やSEXに対する異常なまでの好奇心に、懐かしさを覚える「今や立派な人の親」も少なくないだろう。

 純の唯一の特技は音楽だ。純はボブ・ディランを崇拝し、ギターを弾きながら自作の歌を歌う。終盤、純は、それまでほとんどオナニーのような趣味でしかなかった音楽を武器に立ち上がる。そのくだりに込められたメッセージは偉大だ。大事なのは「自分の武器に気づくこと」と「勇気をふりしぼること」。純が文化祭でオリジナル曲を熱唱するシークエンスでは、平凡なひとりの高校生の鮮やかな覚醒が描かれる。それは人によっては「かつての自分」であり、人によっては「これからの自分」かもしれない。丸々2曲をフルコーラスで採用した制作者の心意気に敬意を表したい。

 主人公の純を演じるのは、ロックバンド「黒猫チェルシー」の渡辺大知だ。俳優ではなく、リアルに歌える人物をキャスティングしたのは正解だろう。しかもこの渡辺が、うだつの上がらない文系キャラを好演。みうらじゅんが「おそろしいほど(自分に)似ている」と感想を述べたのもうなづける話だ。ほかにも、隠岐島のユースホステルで働く謎のおやじに「銀杏BOYZ」の峯田和伸、純の家庭教師に「くるり」の岸田繁を起用するなど、音楽的素養のある人物を脇に配している。峯田が隠岐島で歌う「旅に出てみよう?」で始まる、懐かしい70年代気分のヒッピー風フォークソングも、この映画の雰囲気にはぴったりだ。

 監督は、同じくみうらじゅん原作の「アイデン&ティティ」(03年)でもメガホンをとった田口トモロヲ。サブカルキングの自伝的な思春期を再現するには、本人の人柄と世界観を知る盟友に任せるのが一番という判断なのだろう。いずれにせよ、主人公の気づきでもある「カッコ悪いことはカッコいいこと」というメッセージは、絵作りやドラマがまったく洗練されていない本作「色即ぜねれいしょん」の評価にも適用できる。

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