◆ミステリーの動機づけにはもう少し丁寧さと説得力がほしかった(55点)
ある日、飛行機の墜落事故が起きた。奇跡的に生き残った男女5人の乗客は、女性セラピストのクレア(アン・ハサウェイ)のカウンセリングを受けることに。ところが、5人の生存者は次々と姿を消していく。不審に思ったクレアは事故の真相を探り始めるが……。
クレアの周りで起こる不思議な出来事。サスペンス風味なドラマのなかで、「一体何が起きているのか?」という謎解きを楽しむミステリーだ。謎解きの結末については、ひと言ふた言いいたいことはあるが、ネタバレめいてしまいそうなので、ここではガマンする。強いて言うなら、ミステリーを見慣れている人なら比較的早い段階でピンとくるだろうし、見慣れていない人であれば、最後までそれなりに楽しめるだろう。
一方で、たとえ(ひとつの大きな)結末に気づいたとしても、その全貌がなかなか見えてこないのが本作「パッセンジャー」だ。というより、あえて全貌を見えにくくしていることこそが、この映画のキモだろう。単純に結末を驚かせようというだけでなく、枝葉を含めた全貌解明を観客に求めている。
ゆえに、早めにピンときた人は、<では、なぜそうなっているのか?>という方向から全貌の解明につとめるといいだろう。結末を「なーんだ」のひと言で片付けるのはもったいない。鑑賞後に誰かと語らいながら伏線をふり返えることで、それなりにおもしろさが見えてくる作品でもある。
ただし、ラストで明かされる全貌の中核を担うある"約束事"については、なぜそうした"約束事"があるのかを冷静に考えたとき、観客を納得させるだけの説得力があるとは言いがたい(むしろ、こんな"約束事"はないほうがいいのでは……と私などは思ってしまう)。
また、クレアがのめり込む恋愛のてん末に至っては、カウンセラーとは到底思えない軽率さが目にあまり、たやすく共感することができない。他意はないのかもしれないが、この軽率はなはだしい展開は、プロのカウンセラーに対する軽い冒涜ともとれる。
全体をコンパクトな尺(94分)にまとめたのは潔く、クレアを演じたアン・ハサウェイの頑張りも認めるが、ミステリーの動機づけには、もう少し丁寧さと説得力がほしかった。せめて、謎解きと並行して、カウンセラーとして人生をどん欲に探求し、患者のために尽くすクレアの姿が描かれていれば、本作「パッセンジャー」に対する評価はもう少し高まったかもしれない。
(山口拓朗)
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