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激映画批評

ハイキック・ガール!

◆他に類を見ないガチンコ女子高生格闘アクション(70点)

ハイキック・ガール!

© 2009 ハイキック・ガール!パートナーズ

 映画会社社員として「マッハ!」(03年、タイ)を買い付け大ヒットに導き、トニー・ジャーを日本に紹介した西冬彦監督は、しかし一抹の寂しさを感じていた。香港にも、ハリウッドにも、そしてタイにもこんなに凄いアクション映画があるのに、なぜ日本にはないのか。

 いてもたってもいられなくなった彼は会社をやめ、なんと自分で金を集め、作ることにした。

 『ハイキック・ガール!』は、ひとりの情熱的な男が、一歩間違えば派遣村の一員になる危険を冒しながら作り上げた、渾身のアクション映画である。

 めっぽう強い女子高生の土屋圭(武田梨奈)は、師匠(中達也)との型ばかりの稽古に飽き足らず、街で腕自慢の男たちを次々とけり倒していた。やがてその評判を聞いた「壊し屋」なる組織から、圭にスカウトの電話が入る。

 『ハイキック・ガール!』は、リナティーこと武田梨奈の存在を抜きに語ることはできない。西監督が自らの夢であるこの映画のため日本中を血眼になって探し、ついに見つけた逸材で、長きカラテ修行の末、映画デビューとなった現役女子高生だ。

 実際に一流の空手選手(黒帯)だから、とにかく強い。おまけに可愛い。意志の強そうな声と、切れ長の目。世のMな男性はイチコロ間違いなしであろう。

 とはいえ、強いといっても所詮は体重40kgのやせっぽちな女の子。たかが知れてると思う人も多いはず。

 そこで私はイケメン編集者S氏と共に道場に出向き、実際に蹴っていただく事にした。監督の、「前田さんならローキックでいいですよね」という、意味不明な薦めにより、リナティーの強烈なローを味わったが、下手な男子選手よりはるかに重い。生で蹴られたら、ボブ・サップだって涙目になりかねない威力であった。

 劇中で、数々のリアルスタントを披露する彼女。西監督は、プロデューサーとして関わった「少林少女」で、あの柴咲コウの顔面を、本気蹴りする演出を見せたほどのスパルタな人だから、自身の監督作である本作ではさらに容赦しない。自らも出演して、武田梨奈の小さな顔を蹴り飛ばし、その後3倍返しされるといった無茶な格闘シーンを次々と繰り出してくる。

 ワイヤーやCG、スタントマン、寸止め空振りは一切なし。巻き込まれる通行人役の女性を含め、画面に映るすべての「痛み」は本物だ。とくに武田梨奈の蹴りを受ける場面は危険なため、本物の格闘家などを相手役として採用した。

 アクションの振り付けは見た目ではなく実戦重視で、それぞれの選手たちと「この状況ではどうするか」ディスカッションした上で、役に立つであろう技、動きを採用した。役者も監督も格闘のプロだからこそできる、贅沢な方法だ。

 そうした本物の技を、奇をてらうことなく、カッコもつけず、愚直なまでにリフレイン&スローですべて見せる。時にはクリーンヒットとはいえない攻撃もあるが、とにかく全部さらけ出す。そのストイックさを愛せるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの分岐点だ。いわゆる「器用で完成度の高い作品」を求める人には、本作が行った挑戦の凄み、魅力は伝わるまい。

 ストーリーについては、一切の期待は無用。30分もたつと、いったいこいつらが何のために戦っているのかさっぱりわからなくなってくる。もちろん、すべては計算済みの話。

 中途半端なことはせず、武田梨奈の本気アクションによる一点突破。それを監督以下、エキストラや脇役の格闘家、アクション俳優が全力で支える構造となっている。

 その思い切ったコンセプトは、低予算で世界を狙うこうした作品の場合、100%正しい。ぬるいハンパ大作ばかり連発するメジャー邦画は、いつか必ず飽きられる。というより、今だって見終わってどれほどの人が満足を得ているか。

 そんなとき、こうした「本物の情熱」を持つ映画が注目を浴びるときが、必ず来るだろうと私は思っている。

 日本独特の武道、精神、そして"女子高生"をもって、世界のアクション映画界に殴り込みをかけた『ハイキック・ガール!』。映画作品としてはまだまだ完璧には遠く、伸びる余地は多々あれど、他に類を見ない突き抜けぶりがあることは紛れもない事実だ。

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