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ブッシュ - 前田有一

本格社会派作品を期待してはだめ(45点)
ブッシュ

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 オリバー・ストーン監督のスケジュールに急遽空きが発生したため、オバマ就任100日少々というこんなに早い時期に、前大統領の伝記映画が登場する面白い状況が生まれた。だが、急ぎ作ったとは思えない安定したクォリティは、さすが名うての社会派監督だ。

 名門ブッシュ家の息子W(ジョシュ・ブローリン)は、政治家の父ジョージ(ジェームズ・クロムウェル)と有能な弟の間に挟まれ、裕福ながら悩み多き青春時代を過ごしていた。野球の仕事がしたいと密かに考えていた彼は、父親の紹介による石油採掘の仕事もすぐに放り投げてしまう。そんなとき、Wは父から大統領選の手伝いをしてくれと頼まれ心動かされる。

 ブッシュ前大統領が映画界で扱われるときは、たいていバカにされるか、強烈な批判にさらされるかのいずれかだ。ところが本作に、そうしたあからさまな反ブッシュ色はない。オリバー・ストーンは有名なアンチ・ブッシュ派だから、これは意外であった。

 ではどんな作品になっているかといえば、一言で言うと人間喜劇。ちょっと間が抜けているが、誠実でいいヤツで決して憎めないダメ主人公。一緒に酒を飲んだら最高、と思えるような好人物だが、この男がどういうコンプレックスを持ち、それが後の政策に影響を与えたのか。そのあたりを重点的に描いている。これが監督の考えるブッシュ像であり、イラク泥沼化の遠因ではないか、というわけだ。

 それは理解できるし、別にそういう考えがあってもいいが、できればドル基軸通貨の防衛という視点にも言及してほしかった(オイル確保の視点は語られている)。それは、社会派監督としての彼に対し、私が最低限期待していた要素の筆頭であった。

 そんなわけで、骨太な社会派を期待すると間違いなく肩透かしにあう。あまりリサーチ期間がなかったことも、こうしたコンセプトにせざるを得なかった原因か。あるいは、あまり真面目にやると、シャレにならないほど暗い映画になってしまう懸念があったのかもしれない。いまハリウッドは、去年までの「暗」から「明」へ、明らかに路線変更を行っている。

 ぱっと見て感心するのは、あえて似せすぎず、だが本人だと一目でわかる程度に施されたメーク技術。

 中でも、いつも同じ表情をしているタンディ・ニュートン(ライス補佐官役)などは、出てくるたびに笑いを誘う。いくらコンドリーザ・ライスが始終しかめっ面ばかりしていたからといって、あれはやりすぎだ。その表情が一番似てると自分で思っているのかと想像すると、これまた面白い。

 彼女をはじめとするブッシュ政権の面々が、なんともひどい扱いで、ブッシュとパウエル以外はすっきりと単純化されたおバカさんキャラになっている。

 さらに笑えるのは、ブッシュ役のジョシュ・ブローリンとコリン・パウエル国務長官役のジェフリー・ライトが、酒場で大喧嘩して逮捕されたという先日の報道だ。パウエルがケンカするならチェイニーだろ、と思わずつっこんだ人も多かろう。

 ともあれ、これを見るときには、真面目でお堅い政治映画を期待せず、オリバーさんによるブッシュ政治のオモシロ解釈を眺めるつもりで、気軽に出かけたほうがいい。

前田有一

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