余命1ヶ月の花嫁 - 前田有一

有名美談の映画化も、全体に遠慮がちで見るべきものは少ない(30点)
余命1ヶ月の花嫁

© “April Bride”Project

 『余命1ヶ月の花嫁』とは、なかなか目を引くタイトルだ。最初にテレビ放映されたとき、その驚くべきエピソードがドキュメンタリー、すなわち実話と知った人々は大きな衝撃を受けた。そこから始まった一連のムーブメントは、ついにこの劇映画化を実現させるにいたった。

 イベントコンパニオンの長島千恵(榮倉奈々)は、ある展示会で知り合った赤須太郎(瑛太)とやがて付き合い始める。だが千恵には、乳がんを宣告され乳房を失うことになるという深刻な悩みがあった。それでも彼女を追い続ける太郎の姿に、二人の絆は深まっていくが、彼らの愛を切り裂くように乳がん再発の悪夢が襲い掛かる。

 余命一ヶ月の恋人に、せめて結婚式をあげウェディングドレスを着せてやろうという美談の映画化。

 週刊誌報道やネット上では、美談ビジネスに群がる利権の数々や、花嫁花婿の過去や行動に対するツッコミが色々と暴かれている。じっさいこの映画のタイトルを検索すると、思わず苦笑したくなるようなサイト群が上位にやってくる。

 そこに書かれていることの真偽をどうこういう気はない。だが、いったいどういう人がこういう映画を好んで見に行くのか、ちょっと想像がつかないのも事実。ドキュメンタリーを見た人が、あの感動をもう一度味わいたくて、というケースが多いのか。

 だがそれは、見方を変えれば、映画のラストで花嫁が死ぬのを、2時間まだかまだかと待っているようなモノだ。私だったら、そんな自分が嫌になる。

 とはいえ本作は、一時期の韓流映画のように安易なお涙頂戴に走ることなく、モデルとなった関係者等に対して、作り手も演じる側もひたすら誠実に、真面目に題材を扱おうとしている空気が伝わってくる。

 ただ必要以上に遠慮がちな態度は、ドキュメンタリーならともかく劇映画においては、逆に痛々しさを感じさせる場合がある。ヒロインの半生を省略やら脚色する事に対して手が縮んでいるから、物語のダイナミズムが奪われ、冗長になる。結果的には、一番盛り上がる結婚式の場面だけ見ればいいや、となってしまう。

 そもそもネタの鮮度自体古めで、かといって熟成されているわけでもなく、時期としては中途半端という印象も否めない。

 乳がん撲滅のための啓蒙、という大義も、はたしてどれほど効果があるのか疑問だし、そもそもやるならもう少し上手にやってほしいという思いだ。こんなにも簡単に「あやしげな美談」とレッテルを貼られてしまうというのは、あまりに脇が甘いように感じる。

前田有一