映画ファン待望の電子書籍(スマートフォン向けアプリ)

ハロウィン - 前田有一

ジョン・カーペンター監督の殺人鬼ホラーをリメイク(70点)

 オリジナルの78年版『ハロウィン』(ジョン・カーペンター監督)は、なんといっても殺人鬼映画の金字塔であり、のちに『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』といった大ヒットシリーズを生み出す源泉にもなった。今回のリメイクも、力の入った本格的ホラー映画で、大のホラーマニアとしても知られるロブ・ゾンビが脚本と監督を担当した。

 イリノイ州、ハロウィンの夜。孤独な少年マイケル(ダエグ・フェアーク)は、家族に魔の手を振るう。ルーミス医師(マルコム・マクダウェル)の手にゆだねられたマイケルは17年後、精神病院から脱走して故郷に向かう。

 オリジナルもリメイク版も、怖さのポイントは「混乱」ではないかと私は考える。じつのところ、重大な箇所をロブ・ゾンビは変更しているのだが、このツボ部分はきちんと押さえている。少々異なるやりかたで客を混乱させ、原版と似たような後味の悪さを残している。伝統とも言うべき傑作メロディはいつまでも耳に残り、ぞっとする思いを胸のうちに残しながら、私たちは席を立つことになる。

 この変更について、監督はスタジオ側ともめながらも主張を通した。前半、やけに丁寧に殺人鬼の少年時代を描いているなと思ったが、なるほど重要な布石を打っていたわけかと納得した。

 余談だが、少年時代のマイケルの熱演はこの映画の大きな見所である。むしろ、ブギーマンよろしく大虐殺を繰り広げる成長後よりも不気味で怖い。

 オリジナル同様、新『ハロウィン』は、のちの「殺害シーンがギャグ」になる殺人鬼ものとは一線を画したガチンコ恐怖映画。キチガイならではのルールが通じぬ恐ろしさ。鑑賞後も疑問に思わざるを得ない、何をしたいのかまるで不明な行動原理は、こちらの心をかき乱し、恐怖の余韻を体験させる。

 『13日の金曜日』のジェイソンのように、もはやマスコットになってしまったキャラクターと違い、あくまでリアルな人間として演出したロブ・ゾンビ監督の狙いは、クライマックスでしっかり実を結んでいる。

 これを実際ハロウィン(10月31日)に見られる日本の観客は幸せだ。あの後味の悪さを当日に擬似体験することを幸せと呼ぶとしたら、の話だが。

前田有一

スポンサードリンク