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アイアンマン - 前田有一

「インクレディブル・ハルク」に続くアメコミ超大作(65点)

 美やパワーに対する内なる欲求、憧れが強いのか、アメリカ人は肉体改造が大好きだ。

 ボディビルやプロレスの大会は、アナボリックステロイドをバンバン入れた大男ばかり。誰が見たって違法薬物を使用しているのに、当たり前のようにテレビで放映するなど、競技自体が市民権を得ている。それどころか街のジムや高校スポーツ界にだって、使用者は珍しくもない。

 一方女性もダイエット熱が高く、美容整形に手を出すセレブは後を絶たない。効果が出ているかは微妙であるが。

 そんなアメリカで『アイアンマン』が大ヒット(興行収入100億円で大成功といわれる中、公開わずか3日で約59億円)し、かつ中身にも満足した人が多かった(大手批評サイトで95%もの支持率を得た)のは当然といえる。

 天才的な兵器発明家で世界的軍事企業のCEO(最高経営責任者)トニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr)は、視察先のアフガニスタンで襲撃され、武装ゲリラに拉致されてしまう。監禁先で自社の最新兵器の生産を強要された彼は、同じく捕らえられた医師インセン(ショーン・トーブ)の力を借り、密かに脱出用のパワードスーツを作り始める。

 のっけから爆笑の連続である。

 まず、薄汚いほら穴に閉じ込め、そこでハイテクミサイルを作れなどと無茶を言うタリバンの存在がいい。彼らは軍事テクノロジーの粋たる精密誘導システムを、DIYの犬小屋づくりか何かと勘違いしている。

 命を脅かされているとはいえ、そこで素直にノミとトンカチで作り始める主人公にはさらに笑った。マクガイバーもびっくりの創意工夫である。

 もちろん彼が作っているのはミサイルではなく、脱出用の武器。爆弾や重火器でなく、わざわざ誰も作ったことのない、アイアンマンスーツなんてものを作るあたりがお茶目である。途中で気づかぬタリバンの間抜けさがまたほほえましい。現実のテロリストもこんなに阿呆だったらどれだけ良いか。

 ともあれ、ほら穴でアイアンマン零号機を作った彼は、自分が死の商人だったと気づいて改心。今後はスーツを改良して正義のため戦うことにする。

 アメリカ映画にかかれば、このように悪名高い軍事企業だって純真無垢な発明家になってしまう。没落したリーマン・ブラザーズら投資銀行から戦争業界へ、今後の経済の牽引車が変更されたという事か。ずいぶん露骨な宣伝をやるものだ。

 その後も荒唐無稽の度合いは際限なく上昇。この"戦う社長"は、現在不況の米国庶民の夢(経済的成功、肉体改造)を背負い、スーパーヒーローとして成長していく。

 なお本作は、先日日本で公開された『インクレディブル・ハルク』やこの後に続くアメコミ実写化シリーズとリンクしているから、それらを見る予定のある方は必見となっている。そのためには、エンドロールの途中で席を立ってはいけない。

 そんなわけでこれ、能天気な内容だが、前半の拉致までの流れにそこそこリアリティがあるため、その後もそれほど白けずに見ることができる。また、いまどきのアメリカ人の嗜好がよくわかるという点もオススメ度に貢献する。よってこの点数にした。

 突っ込みタイプの男性にとっては、鑑賞後の会話のねたにも事欠かない。男性に笑わされるのが大好きな女性とのデートに使うと、真価を発揮する一本といってよい。

前田有一

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