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インクレディブル・ハルク - 前田有一

怒ると巨大化、超人ハルクがヒーロー映画として帰ってきた(70点)

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 怒ると巨大化し、緑のマッチョマンとなってあたりかまわず破壊する。マーベル・コミックの誇るヒーロー「超人ハルク」は本国アメリカはもちろん、過去にテレビシリーズが放映された日本でも根強い人気がある。

 だがそのハリウッド実写版は今からほんの5年前、アン・リー監督によって行われたばかり。この『インクレディブル・ハルク』はその続編というわけでもないし、いまさら別のメンバーで作り直すのはなぜなのか。それにこの新作、所々よくわからない場面があるし、とくにラストシーンの不可解さはいったい何なのだ?

 科学者のブルース・バナー(エドワード・ノートン)は、実験中に大量のガンマ線を浴びて体質が変化。心拍数が200を超えると、緑の巨人ハルクに変身してしまう。彼を利用しようとたくらむ軍とロス将軍(ウィリアム・ハート)から逃げるため、ブラジルのスラムに身を潜めるバナーは、将軍の娘で恋人のベティ(リヴ・タイラー)を想いながら、必死に特異体質の治療法を探っていた。

 冒頭の謎は、当のマーベル・コミックが本作からは自前で映画制作を行っているという事実によって氷解する。アメコミファンにはいうまでもない事だが、ハルクやスパイダーマン、Xメンといったあちらのスーパーヒーローは、漫画の中では作品を超えて競演することも珍しくない。だが、映画版ではそれは実現していない。

 そこで権利関係を明快にして、今後は映画でもやりますよ、というわけだ。本作のラストに出てくる"謎の人"は、何を隠そう『アイアンマン』の主人公トニー・スターク(演じるのはロバート・ダウニー・Jr)である。アメリカで大ヒットした実写版『アイアンマン』は、もうすぐ日本でも公開になる。

 また別のヒーロー、キャプテン・アメリカの実写版もまもなく登場する。本作の中にも、ほとんどの日本人にとってはさっぱりわからないそれに言及する小ネタがいくつか見受けられる。

 つまりこの『インクレディブル・ハルク』は、アメコミ映画新時代の幕開けともいうべき作品。今後連発される、アメコミ超大作を楽しむためには、絶対欠かせない第一歩ということになる。あらゆるヒーローの中でも、ハルクの知名度はトップクラスなので、力の入れようも違う。

 主演のエドワード・ノートンは、アン・リー版ハルクの際もオファーがきたが断り、今回の"本命"映画化で満を持してブルース役を引き受けた。よって、脚本にもかかわるほど気合が入っている。またもガードマン役で特別出演しているテレビシリーズ版のハルク役、ルー・フェリーノと絡む場面はなかなか意味深だ。往年のスタービルダーだったフェリーノのいまだに美しい肉体、とくに太い前腕の健在ぶりについても、いちボディビルファンとしては言及しておかねばなるまい。

 映画については、ちょいとネクラなアン・リー版に比べ、ストレートなヒーローものへと方向転換。……したわりには、格闘アクションの組み立てが下手。ヘビー級同士の戦いは、最終的には力で上回ってこそ観客の溜飲も下がるのだから、もっと力で押しまくってほしいもの。あるいはせっかくグレーシー柔術を習ってるんだから、月々の月謝分くらいはそれを使う遊びがあってもよい。

 逆に、心拍数制限があるためカノジョとのHもままならない、といったお笑い要素はよかった。リヴ・タイラー相手じゃ心拍数200はあっという間だろう。

 そんなわけで、これ一本では満足度に多少の難があるものの、前述したように今後のアメコミ映画を楽しむためには不可欠な作品であるからして、ファンは無条件で見るほかあるまい。

前田有一

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