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バグズ・ワールド - 前田有一

2000万もの本物の命が殺しあう姿を延々と映す衝撃の"戦争映画"(60点)
バグズ・ワールド

© 2006 Les Films du Reve/Cite Amerique/TF1 International/IRD /France 2 Cinema

 最近、ネイチャー系なる映画が若い婦女子に人気という。『ディープ・ブルー』(03年)や『アース』(07年)といった、大自然体感型のドキュメンタリー作品のことだ。以前はこの手の作品は商売的に難しいと考えられており、買取ったもののどの程度のヒットが見込めるのか、担当者さえもわからなかったという。だが今はもう違う。自然映画はウケる、これはひとつの定理となりつつある。

 ……が、その流れにある(と思われがちな)『バグズ・ワールド』は、どう考えても女性ウケはしないだろう。ムシキングに夢中の子供たちならいざ知らず、足が何本もウネウネするシロアリの映画を、癒し大好きスイーツ女性に提供するのは無謀というもの。今からでも遅くないから、宣伝対象は子供メインにシフトしたほうが良いと思う。

 だいたいこの映画、コンセプトからして凄い。

 アリ大好きなフィリップ・カルデロン監督は、「アリを主人公にした『スパルタカス』(60年の米映画。ローマ帝国へ反乱を企てた男を描く超大作)を作りたい」と熱望。だがCGによる作り物のアリではダメ。生物学の専門家の顔を持つ監督は、なんと本物のアリを使うことを決定。

 早速巨大な蟻塚にオオキノコシロアリ200万匹を配置、それを2000万匹の凶暴なサスライアリに実際に襲わせ、空前絶後の戦争映画を作り上げた。

 もう、どこからどうみてもやってる事が変態である。

 アリ同士が殺しあう様子は最新のボロスコープ(マクロ撮影用の特殊なレンズ)を使い、苦悶の表情のアップまでとらえる事に成功。その後もひたすら白兵戦を撮影し続ける監督。その映像に後からナレーションをつけ、2民族の決戦物語風の壮大なストーリーを仕立てあげた。

 アリ愛護協会があったら、真っ先に粛清されること間違いなし。シーシェパードもグリーンピースも、一刻も早くフランスに急行すべきであろう。

 だいたいアリ好きのくせに、かわいいありんこたちがお互いの肉体を噛み千切り、ブチ殺しあう姿を嬉々として撮影していたかと思うと、そのえげつなさには脱帽である。

 本物のアリを使い、ドキュメンタリーでなく劇映画を作る。オオゲサな音楽や語りで煽りまくり、感動ドラマをでっちあげる。優等生ネイチャードキュメンタリーの偽善性に飽き飽きしていた人には、こいつは最高の一本だろう。奇麗事を言ったって、お前らアリが殺しあうところを見たいだろ? とでもいいたげな監督の笑顔がまぶしい。

 個人的には癒し系自然派映画より、こちらの方がずっと面白いと思うがさてどうだろう。

前田有一

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