お忙しい方に、最高に良い映画を観て頂くための映画批評サイト【映画ジャッジ!】

米映画批評

WORLD’S GREATEST DAD

◆自慰行為中の死亡事故を扱ったブラックコメディ(80点)

 ティーンエイジャーの死は聞くだけで心が痛くなる。将来のある若い命が消えてしまった事に人々はショックを覚え、亡くなった少年や少女は人々にとって、ヒーローとなる。そして彼や彼女の短い人生は美化され、その若々しく美しい肉体と共に人々の記憶に残るのだ。

 コメディアンとしても俳優としても活躍する、『SLEEPING DOGS LIE』の映画監督ボブキャット・ゴールドスウェイトの最新作『WORLD’S GREATEST DAD』はそんな世の風潮を逆手に取った、風刺の効いたブラックコメディだ。本作では、自慰行為中の死亡事故という、あまりに論議を呼ぶ題材を扱っているが、『ドニー・ダーコ』のリチャード・ケリーが持つダーコ・エンターテイメントの製作のもと、ゴールドスウェイト氏はオリジナルの脚本のまま自由に映画を制作する事が出来た。

 物語は大きく分けて2部に分かれている。前半はロビン・ウィリアムズ扮するシングルファザーの高校教師ランス・クレイトンとその15歳の息子カイル(ダリル・サバラ)との微妙な関係を描く。ランスは高校で詩を教えているが、将来は作家になり、大金持ちになる事を夢見ている。彼の問題の種はいつも息子のカイル。カイルの友達といえば、痩せっぽちで気弱なアンドリュー(エヴァン・マーティン)くらいで、最もの関心はハードコアポルノ鑑賞と自慰行為。ランスは美人の美術教師クラリー(アレクシー・ギルモア)との密かな恋愛を楽しむ傍ら、学校でも問題ばかり起こし、独ぼっちの息子を何かと気に掛ける。

 そして後半、ランスは家で息子の変わり果てた姿を発見する。俳優でヴィッド・キャラダインの死因と同じく、カイルも首を吊りながらの自慰行為中に誤って死亡してしまったのだ。泣き崩れるランス。しかし、直ぐさま我に返り、彼は偽の遺言状を書き、まるでカイルが自殺を図ったかの様に取り繕い、警察に電話をする。

 ランスが書いた詩的な遺言状は学校の新聞に掲載され、可哀想な父と自らの命を絶った孤独な少年は瞬く間に学校中のヒーローとなり、カイルの事を馬鹿にしていた者までもがカイルを崇拝し始め、人気の無かったランスのクラスは生徒で一杯になってしまう。そして、カイルの手記(もちろんランス作)をも公になってしまうのだが…。

 ランスはいつも息子に不適切な態度を取られようとも、恋人が他の男に気を惹かれようとも平然としている男。しかし、そんな男がずっとコミュニケーションを取りたかった息子が死んだ時、一瞬取り乱してしまう。息子にどんなに疎まれようとも、カイルはランスにとってたった1人の家族であったし、無償に愛する事の出来る対象だった。葬儀後、学校で安否を尋ねられても、やはり平然を装ってしまうランスだが、実は孤独感でいっぱいなのだ。事実、彼は息子の部屋を整理する事が出来ないのだから。そして息子の死を機に、普段話をしない隣人とも会話をする様になる。

 ランスがカイルの死を彩ってしまった事で、学校や世間には「自殺フィーバー」が巻き起こる。咄嗟の行動だったため、ランスも何故カイルの死を取り繕ってしまったのか分からなくなってしまうが、1人だけ、カイルの不在や周りで起こっている事を冷静に見つめている者がいる、それはカイルの親友アンドリューだ。カイルの事を最も良く知る友達であった彼だけが、起こっている事の不可解さに気付き、何度もランスとの会話を試みる。彼は全てを把握しているのだ。

 ランスの取った行動は不道徳である、と言う人もいるだろう。しかし、どこに我が子に変態の汚名を着せられる事を望む親がいるだろうか。何故ランスが息子の死を細工したのかは映画の中では明かされないが、それは息子の恥を隠したいという、父の息子に対する最後の「愛」だったのかもしれない。そんな、人の正直な気持ちがそのまま描かれている本作は、時にわたしたちの心に波を立ててしまうだろう。それでもやはり、死んだ息子にとって、ランスは実は理解のある父親だったのではないだろうか、という思いが強く残る。

岡本太陽氏 高得点批評

ディファイアンス

「ユダヤ人がナチスに武力行使した逸話を描くダニエル・クレイグ主演映画(80点)」

この映画の批評を読む »

ゾディアック

「デビッド・フィンチャー監督最新作、主演:ジェイク・ギレンホール(75点)」

この映画の批評を読む »

そして、私たちは愛に帰る

「2007年のカンヌ国際映画祭で大喝采を浴び脚本賞を受賞!(80点)」

この映画の批評を読む »

人気批評ランキング

注目の映画

批評のバックナンバーをチェックする »

映画ジャッジ! DVD 人気ランキング(3月7日週)

『1位:サマーウォーズ

  • 監督:細田守
  • 出演:神木 隆之介, 桜庭 ななみ

このDVDの批評 »

『2位:ワイルド・スピードMAX

  • 監督:ジャスティン・リン
  • 出演:ミシェル・ロドリゲス, ジョン・オルティス

このDVDの批評 »

『3位:マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)

  • 監督:ケニー・オルテガ
  • 出演:マイケル・ジャクソン

このDVDの批評 »

『4位:20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗 豪華版

  • 監督:堤幸彦
  • 出演:唐沢寿明, 豊川悦司

このDVDの批評 »

『5位:96時間

  • 監督:ピエール・モレル
  • 出演:リーアム・ニーソン, ファムケ・ヤンセン

このDVDの批評 »

『6位:2012 ブルーレイ&DVDセット

  • 監督:ローランド・エメリッヒ
  • 出演:キウェテル・イジョフォー, ジョン・キューザック

このDVDの批評 »

『7位:カムイ外伝

  • 監督:崔洋一
  • 出演:松山ケンイチ, 小雪

このDVDの批評 »

『8位:ウルヴァリン:X-MEN ZERO <2枚組特別編>〔初回生産限定〕

  • 監督:ギャヴィン・フッド
  • 出演:ヒュー・ジャックマン, リーヴ・シュレイバー

このDVDの批評 »

『9位:グラン・トリノ

  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 出演:クリント・イーストウッド, ビー・バン

このDVDの批評 »

『10位:沈まぬ太陽 スタンダード・エディション(2枚組)

  • 監督:若松節朗
  • 出演:渡辺 謙, 三浦友和

このDVDの批評 »