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米映画批評

パーフェクト・ゲッタウェイ

◆月並を想像してたら大間違いのハワイが舞台の極上スリラー(75点)

 新婚旅行と言えばやっぱりハワイ。ここ10年程で、日本人のそんなステレオタイプな概念もだいぶ変わってきたが、やっぱりハワイは強い。それはアメリカ人にとっても同じ事。ハワイの透き通った青い海と緑の生い茂るジャングルは世界中の人を虜にしている。映画『パーフェクト・ゲッタウェイ』では新婚ホヤホヤの若いカップルが日常を忘れて南の島で思いっきり解放されるはずが、ある殺人事件に巻き込まれしまう。この映画はスリラーだが、ブラジルに旅行に行った若者達が酷い目に遭ってしまう『ブラッド・パラダイス』の様な悪質な映画を想像していると大間違い、良質な映画不作のこの夏、本作は夏らしく気楽に観れて満足感を得る事の出来るなかなか貴重な作品なのだ。

 物語は結婚式を撮影したビデオ映像から始まる。クリフとシドニー・アンダーソン(スティーヴ・ザーン&ミラ・ジョヴォヴィッチ)は新婚ホヤホヤのカップル。ハワイで新しい人生の門出を祝おうとしている彼らは、ハイキングで隠れ家ビーチに行こうと計画する。その時に地元のビーチに行きたいというクレオとケイル(マーリー・シェルトン&クリス・へムズワース)というヒッチハイカーのカップルに出会う。ちょっとした意見の行き違いで彼らと同行はしないが、クリフとシドニーは他のハイキンググループからあるカップルがハワイで殺人事件を犯した事を知る。その後、ハイキング中にまたもう1組のカップル・ニックとジーナ(ティモシー・オリファント&キエレ・サンチェス)に遭遇するが、クリフとシドニーの心にどんどん不信感が募ってゆく…。

 殺人事件はホノルルで起こった。防犯カメラが2人組の男女がある若いカップルを殺害するのを映していたのだ。殺害後、被害者の歯は抜かれ、爪も剥がされた。犯人の手口は初心者のものではなく、連続殺人犯の可能性を示唆する。クリフとシドニーの前に現れる2組のカップル。そのうち1組はもしかしたら連続殺人犯かもしれない。というより、クリフとシドニー殺人犯と遭遇しなければ映画としては成立しない。わたしたちはクリフとシドニーの新婚旅行の行方を見守るが、物語が進むに連れ、衝撃的な秘密が明らかになる。

 クレオとケイルのカップルはハワイで挙式を挙げた。それは大げさなものではなく、質素に2人きりの結婚式だった。クレオはとてもフレンドリーな女性、しかし少々粗野な面も目立つ。ケイルは乱暴そうな風貌で、同時に非常にミステリアスな雰囲気を漂わせている。この2人は明らかに怪しい。一方、ニックとジーナはとても気さくで、クリフとシドニーとハイキングを共にする。ジーナはいつも笑顔で接するが、長い事付き合っているわりには結婚してくれないニックにウンザリ気味。ニックは軍隊の特殊部隊にいた事があり、頭にチタン製の板を埋め込んでいるという男。彼はナイフや斧等あらゆる武器を使いこなす事が出来る男で、危険度大の人物なのだが、実はとてもひょうきんで、自分をアメリカのジェダイと公言する。ニックとジーナはクレオとケイルとは違いクリフとシドニーを進んで助けようとする姿が逆に怪しいパターンだ。

 監督・脚本を手掛けるのは『ピッチブラック』『リディック』のデヴィッド・トゥーヒー。彼は『逃亡者』の脚本を手掛けた事でも知られており、この手の物語においてはプロ中のプロ。97分という短い上映時間の中で主な登場人物を絞り、人物設定を細かく描き、観る者に感情移入しやすくさせるテクニックが素晴らしい。また今回は敢えて、ハリソン・フォードやヴィン・ディーゼル等のいわゆる大スターや、この手の映画でありがちな若い俳優達を起用する事を避け、演技力のある中堅俳優達を揃え、映画にメリハリを持たせている。彼らが登場人物達に命を吹き込むのだ。

 物語が始まった時点では主人公はクリフとシドニーである。しかし、物語が佳境に入るとそれが4人になる。秘密が暴かれた時に物語は大きな転機を迎えるのだ。また、ハワイの美しい自然も本作の魅力の1つで、やはりあの島々が人々の心を捕らえて離さないのにも改めて納得させられる。『パーフェクト・ゲッタウェイ』は南の島の壮観、極上のストーリー、そして素晴らしい演技が、ありきたりなスリラーを想像していると、予想外な帰趨をもたらす稀な作品だ。

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