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米映画批評

サブウェイ123 激突

◆あの地下鉄ハイジャック映画をD・ワシントン、J・トラボルタ主演でリメイク!(75点)

サブウェイ123 激突

 9/11後のニューヨーク、そこに暮らす人々の中にはこういう意識が芽生えた。それは、「例え、ニューヨークの様な世界屈指の大都会であっても何が起こるか分からない」というもので、彼らの中にある恐ろしい記憶が警戒心を生んだのだ。トニー・スコット監督最新作『サブウェイ123 激突(原題:THE TAKING OF PELHAM 123)』では『ミスティック・リバー』等で知られる脚本家ブライアン・ヘルゲランドが9/11後のニューヨークを舞台にサブウェイ・ハイジャックを描き、現在でも起こりうる危機の可能性を示唆する。

 ジョン・トラボルタ扮する首にタトゥーのある男率いる武装グループが、ある日ニューヨークのレキシントン通りの地下を通る6番電車をハイジャックし、人質と引き換えに10億円を要求する。その時丁度、運悪く働いていたデンゼル・ワシントン扮する地下鉄の運転指令員であるウォルター・ガーバーは「ライダー」と名乗る武装グループのリーダーと交信してしまった事でその巨大な事件に巻き込まれてゆく…。

 監督トニー・スコットは『マイ・ボディガード』や『デジャヴ』等、デンゼル・ワシントンと数回に渡り映画を作っている事でも知られており、今回もまた彼らは素晴らしいコンビネーションを見せる。9/11テロはもはや伝説の様に語り継がれているが、そんな渦中にあるニューヨークで起こる恐怖をユーモアを交えながら語るトニー・スコット氏のスタイルはまるで1994年の映画『スピード』を彷彿とさせる。

 本作にはジョン・ゴーディの『サブウェイ・パニック(1973年)』という原作本があり、それを基に74年にはウォルター・マッソー、ロバート・ショー主演で映画化もされコメディ的な作風が好評を博した。また、この74年版の作品ではMr.ブルー、Mr.グリーン等と名乗る悪役が登場し、『サブウェイ・パニック』は後にクエンティン・タランティーノの『レザボア・ドッグス』に影響を与えた事でも知られている。

 デンゼル・ワシントン扮するウォルター・ガーバーは妻も子供もいるまじめな一般の社会人。その彼が突然武装集団との交渉人に指名されてしまい、今やアメリカの善良なヒーロー像であるデンゼル・ワシントンが今回もまた人々の為に大活躍する。また、74年版でハイジャック集団と交信したのはザッカリー・ガーバーという地下鉄の刑事で、今回のウォルター・ガーバーという名前はそれに扮したウォルター・マッソーの名前から取られているという。

 武装集団の指揮を執るライダーという男は謎めいた男で、多くの場合笑顔を見せながらも、金に執着し権力を小馬鹿にしている印象を与える。ライダーは原作とオリジナルの映画では計画に則り行動するが、ジョン・トラボルタ版は何かに憤りを感じており、何を仕出かすか分からないという怖さを持ち合わせている。現に人殺しも厭わない。また、彼は賄賂を受け取った罪に問われ運転指令員に格下げされたウォルターの口からそれが事実なのか言わせようとし、人の心を操る事を楽しむという面も見せる。

 共演陣もまた個性的な俳優を揃えており、ニューヨーク市長に『ザ・ソプラノズ』のジェームズ・ガンダルフィーニ、ニューヨーク警察の人質交渉人に『バートン・フィンク』のジョン・タトゥーロ、武装ハイジャック集団の一員にルイス・ガズマンが扮している。特に、ニューヨーク市長が緊急事態ですらも票獲得の為に自分の身なりや人々に笑顔を振りまく様が面白く、緊迫した物語に丸みを帯びさせる役目を担っている。

 オリジナルの映画と照らし合わせてトニー・スコット版を観ると興味深いは、オリジナルから35年が経っているため、テクノロジーの進歩に顕著な違いを見る事が出来る点だろう。まず携帯電話、インターネットに始まり、GPSやビデオチャット等、現代に生きるわたしたちに欠かせないものが登場する。また、物語の中でニューヨーク地下鉄の指令室内でのシーンも多いため、本作は職員が問題が起きた場合にどの様に対応しているのかを知る事の出来る貴重な作品でもある。

 大事件は起きるものの、最終的に人質は救われ、ニューヨーク市に安堵が戻る。そんな事は始めから分かっているだろう。しかし、このウォルターという庶民だが偉大なるヒーローとライダーというモラルの欠如した悪者の対決の物語の中には情熱的なキスシーンもなく、ただこの地下鉄会社の職員として働く庶民のリアルな日常の中で起こった事件が取沙汰された様な描き方がされており、非常に共感を覚える作品となっている。例えニューヨークで事件が起こっても、人々の日常は続いて行くのだ。犯罪者側も素人で、極力リアルな人々を登場させている物語なため、74年の『サブウェイ・パニック』の始めから最後まで眠っているおばさんは登場しないのが残念だが、『サブウェイ123 激突』はシティパニック映画としてはとても見応えのある大満足の作品だ。

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