お忙しい方に、最高に良い映画を観て頂くための映画批評サイト【映画ジャッジ!】

米映画批評

スペル

◆鬼才サム・ライミ監督の自由な精神を感じる今年最高の映画(90点)

スペル

© 2009 Curse Productions LLC. All Rights Reserved

 ゲロを顔に受ける彼女が最高、入れ歯無しの口にキスされる彼女が最高、目にフォークを突き刺す彼女が最高。その彼女とは貪欲さとその影響をテーマに持つサム・ライミ監督最新作『スペル』に主演しているアリソン・ローマンだ。『ホワイト・オランダー』『ビッグ・フィッシュ』で彼女の存在を知った人も多いだろうが、実に『キャプテン・スーパーマーケット』以来のサム・ライミ久しぶりのホラー映画で、彼女は人々の心を撃ち抜く。

 近年、サム・ライミ監督と言えば『スパイダーマン』シリーズだが、『スペル』は彼の1981年監督作『死霊のはらわた』の様な遊び心が伺えるもので、ホラー映画好きを熱狂させずにはいられない作品だ。ライミ氏にとっては『スパイダーマン』という超大作シリーズが続いたために、彼の最新作を観ると、今回原点に立ち返るというよりは、何か全く違う事をしたかった事が明らかで、本作が『スパイダーマン』の程ビッグなプロダクションではない故に彼の意見がより反映された作品なのが見て取れる。

 クリスティン・ブラウン(アリソン・ローマン)は銀行のローンデスクで働く女性。職場のアシスタントマネージャーになるために、彼女は上司に難しい決断さえも出来る事を証明しなければならなかった。そこに現れるのはジプシー風の気味の悪い老女(ローナ・レイヴァー)で(運の悪いクリスティン)、クリスティンは彼女の3度目の不動産ローンの延長願いを断る。不快感をむき出しにする老女はクリスティンに掴みかかろうとするが、警備員に取り押さえられ、その場を去る。この老女の演出がビックリする程気持ち悪く、老人に対して失礼にも思えるが、これはもうライミ氏のユーモア勝ちで、ただただ可笑しい。

 騒動はあったが、クリスティンはその日の仕事が終わって駐車場に向かう。しかし、そこに待っていたのはあの老女。彼女と対峙するクリスティンだが、最終的にその老女に呪いをかけられてしまう。ここでのクリスティンと老女のキャットファイトは映画史に名を残す名シーンで女の掴み合いと言うよりは、殴り合いなのが素晴らしい。その後、老女の事が気になるクリスティンは霊能者に会い、自分の呪いが3日間の生き地獄を味わった後に、地獄へ落ちるものだという事を知る…。

 クリスティンは呪いをかけられてから、事ある毎に悪霊の姿を目撃し襲われる。昼であろうと、夜であろうとそれは襲い掛かり、可愛らしいアリソン・ローマンに恐怖が迫る度に観客は「逃げて!」と思わされる。またジャスティン・ロング扮するクリスティンの恋人で真面目な大学教授クレイは論理的で神秘的な事は信用しようとしないというキャラクターで、こういった物語に必要不可欠な典型的な要素を担う。

 サム・ライミは本作で兄のイヴァンと共同で脚本を書いているのだが、彼らの天才的なイマジネーションには脱帽で、またその彼らの言いなりになっているアリソン・ローマンの体当たりの演技が素晴らしく、「そこまでやっちゃうの?」と思わせる彼女に真の女優魂を感じる。物語の中にクリスティンがクレイ宅での彼の両親とディナーをするシーンがあるが、それには度肝を抜かれる。なぜなら完全なるコメディだからだ。これはもう何でもありのアナーキー映画だ。

 サム・ライミ監督はリアルな映画を好まない。それは彼の監督作を観れば分かるだろう。また常に観客の事を考え、映画から人々にエネルギーを与えたいと考える彼は作品に常に冗談を含む。そういう意味で『スペル』はまさに彼が心の底に持つそのピュアな精神を形にした様な作品だ。本作はアメリカではPG-13というレイティングがされた。現在ほとんどのホラー映画はR指定となるがやはりこの映画は冗談だからこそそういうレイティングがされたのだろう。本作はサム・ライミ監督のこれからの更なる可能性を確認すると共に、アリソン・ローマンというホラームービークィーンの誕生を目の当たりに出来る今年最高の1本だ。

関連DVD・商品

B00349E8C0

スペル コレクターズ・エディション [DVD]

  • 監督:サム・ライミ
  • 出演:アリソン・ローマン, ジャスティン・ロング

スペル コレクターズ・エディション [DVD]の情報を詳しくチェック!

この映画のほかの批評

 

岡本太陽氏 高得点批評

グラン・トリノ

「クリント・イーストウッドが唸る渾身の一作!(85点)」

この映画の批評を読む »

アライブ-生還者-

「アンデス山脈で起こった飛行機遭難事故の真実が今明かされる(80点)」

この映画の批評を読む »

愛を読むひと

「ケイト・ウィンスレットがオスカー・ノミネート確実の名演技を披露!(80点)」

この映画の批評を読む »

人気批評ランキング

注目の映画

批評のバックナンバーをチェックする »

映画ジャッジ! DVD 人気ランキング(3月14日週)

『1位:サマーウォーズ

  • 監督:細田守
  • 出演:神木 隆之介, 桜庭 ななみ

このDVDの批評 »

『2位:ワイルド・スピードMAX

  • 監督:ジャスティン・リン
  • 出演:ミシェル・ロドリゲス, ジョン・オルティス

このDVDの批評 »

『3位:20世紀少年 <最終章> ぼくらの旗 豪華版

  • 監督:堤幸彦
  • 出演:唐沢寿明, 豊川悦司

このDVDの批評 »

『4位:マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)

  • 監督:ケニー・オルテガ
  • 出演:マイケル・ジャクソン

このDVDの批評 »

『5位:のだめカンタービレ 最終楽章 前編 スペシャル・エディション

  • 監督:武内英樹
  • 出演:上野樹里

このDVDの批評 »

『6位:2012 ブルーレイ&DVDセット

  • 監督:ローランド・エメリッヒ
  • 出演:キウェテル・イジョフォー, ジョン・キューザック

このDVDの批評 »

『7位:96時間

  • 監督:ピエール・モレル
  • 出演:リーアム・ニーソン, ファムケ・ヤンセン

このDVDの批評 »

『8位:カムイ外伝

  • 監督:崔洋一
  • 出演:松山ケンイチ, 小雪

このDVDの批評 »

『9位:グラン・トリノ

  • 監督:クリント・イーストウッド
  • 出演:クリント・イーストウッド, ビー・バン

このDVDの批評 »

『10位:ソウ6 アンレイテッド・エディション

  • 監督:ケヴィン・グルタート
  • 出演:トビン・ベル

このDVDの批評 »

メールで映画ジャッジの最新情報をチェックしませんか?

 映画ジャッジでは毎週1回、メールマガジンによるオトクな映画の最新情報を配信しています。週末に公開される映画の批評はもちろん、メルマガ読者だけに先行公開する批評やプレゼントのご紹介もあります。この機会にぜひとも映画ジャッジのメールマガジンをご購読(無料)下さい。より素晴らしい映画ライフをお楽しみ頂けます。