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米映画批評

ターミネーター4

◆あの超人気映画が再び新しい物語の幕を開ける(50点)

ターミネーター4

 映画『ターミネーター4(原題:TERMINATOR SALVATION)』の中で、クリスチャン・ベイル扮するジョン・コナーはスカイネットに1人で乗り込む際にブライス・ダラス・ハワード扮する妻ケイトに「あなたが1人で行ったという事がみんなに知れたら何て言ったら良いの?」と聞かれて「アイル・ビー・バック(I’ll be back)」と言う。そのあまりにも有名なフレーズはシュワルツェネッガーが言うものとは全く異質で、「待ってましたー!」となるどころか苦笑してしまう。そしてわたしたちは感じるだろう、この映画の不必要性すらも。

 『ターミネーター』は1984年に公開され、世界的にアーノルド・シュワルツェネッガーの知名度を上げたジェームズ・キャメロンの監督作だ。この機械と人間の戦いを描く近未来SF映画はシリーズ化され、1作目のリンダ・ハミルトン演じる主人公サラ・コナーの息子ジョンを主人公にした1991年の『ターミネーター2』は爆発的ヒットを飛ばし、2003年にははじめての女性型ターミネーター・T-Xを登場させた『ターミネーター3』が公開された。そしてシリーズのファンの期待を一身に背負うのが続編にあたる今回の『ターミネーター4』で、今回はついに「審判の日」が下ってしまった地球が舞台となる。

 本作は2003年、サム・ワーシントン扮するマーカス・ライトがヘレナ・ボナム・カーター扮する科学者セレナ・コーガンと「プロジェクト・エンジェル」というリサーチのために彼の体の寄贈について話し、それに同意するところから物語が始まる。その後マーカスは殺人を犯した罪で死刑に処されるのだが、15年後思わぬ形で目覚めるのだった。

 2018年、スカイネットによる核攻撃を受けた「審判の日」を生き残ったジョン・コナーは機械軍に対するレジスタンスのリーダーとなっていた。そんなある日仲間のブレア・ウィリアムズ(ムーン・ブラッドグッド)が負傷したマーカス・ライトという謎の男をレジスタンスの基地へ連れてくるのだが、その男はなんと自分を人間だと思い込んでいるマシーンだったのだ。マーカスを殺そうとするレジスタンス達だが、ジョンは彼を逃がす。なぜならマーカスだけが人間の唯一の希望であると信じているからだ。そしてジョンとマーカスは別々にスカイネットの核心に迫る…。

 映画『チャーリーズ・エンジェル』シリーズのマックG が監督を務めるこのシリーズ第4作目ではジョン・コナーは吠えているだけの犬にしか見えないのに対し、マーカス・ライトが寧ろ本作の主人公であるかの様に興味深く描かれている。彼はまるで人間に忌み嫌われるフランケンシュタインで、何故半分機械になってしまったのかという理由を探し求める。マーカスに扮するサム・ワーシントンはオーストラリア出身の若手俳優で、その彼をマックGに推薦したのがジェームズ・キャメロンとオーストラリア出身の大物俳優ラッセル・クロウであり、それだけ可能性を秘めた俳優である事が伺える。ワーシントンは男らしい風貌だがミステリアスな雰囲気を同時に漂わせているのが魅力だ。

 マーカスは死刑の15年後に目覚め、変わり果てた世界に唖然とする。一体何が起こったのか、居る場所すらも分からないまま彷徨い続ける彼は『スター・トレック』のアントン・イェルチン扮するカイル・リースとジェイダ・グレイス扮する口の聞けないスターに出会う。シリーズのファンなら直ぐにピンとくるはずだが、カイル・リースとは第1作目でマイケル・ビーンが演じた未来から来た男でジョン・コナーの父親だ。本作ではカイルはまだ10代という設定で、彼はマーカスと行動を共にする。本作の登場人物をシリーズとリンクさせているのはもちろん面白いが、特にアントン・イェルチンが続編以降重要なキャラクターになるであろうと感じさせられるだろう。

 また随所にサラ・コナーへのオマージュが見られる事も興味深く、物語冒頭でジョン・コナーが上半身のみのターミネーターに襲われるシーンはシリーズ第1作目の終盤でサラ・コナーが同じ様な目に遭っている。またジョンがマーカスこそが唯一の救いであると信じるあたりも『ターミネータ?2』でサラが以前は敵だったT-800をジョンの保護者と考えを変え始めた事を連想させる。それからブレア・ウィリアムズは非常にタフな女性で、戦う女サラ・コナーの直結のオマージュとして作られたキャラクターであり、ケイト・コナーはジョンの子供を身籠っており、母性愛を持つサラ・コナーを描いている様に思える。ただ彼女の妊娠について特に映画の中で触れられないのはいかがなものかと首を傾げたくなる。

 観る側としてやはり一番理解に苦しむのはどうしてマックGが本作の監督に起用されたのかという事だ。まずいまいち彼のスタイルが分かりづらく、これをマイケル・ベイが撮ったと言われれば、そうかと納得してしまうだろう。また『ターミネーター2』ではロバート・パトリック扮するT-1000の液体金属が映像改革を起こしたが、本作ではそういった事件もなく、『マッドマックス』+『マトリックス』の世界観を呈した最新のゲームの様な映画で荒廃した大地で忙しく物語りが展開してゆくだけだ。

 『ターミネーター』フランチャイズではアーノルド・シュワルツェネッガーが一番の目玉商品であり、シリーズを通して彼の出演を見る事が出来る。本作でもなんと彼がカメオ出演しているのだが、非常に「残念」な形で出演しておりクリスチャン・ベールの「アイル・ビー・バック」同様苦笑なのである。2011年には再びクリスチャン・ベイルがジョン・コナーに扮する第5作目が公開されるそうで、これは実に先行き不安な出足である。

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