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米映画批評

スター・トレック

◆お馴染みのあのSFテレビドラマが今までのシリーズとは全く違う新感覚の映画に! (60点)

スター・トレック

© 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

 人間ドラマを強く打ち出したSFテレビドラマ「スタートレック」。『スター・ウォーズ』が公開されるよりもっと前の1966年に放送が始まり、オタクを中心に人気を博し、現在までにテレビシリーズ5本、映画10本、そしてアニメ1本が作られ、常にファンを魅了し続けている。そして今年そのシリーズに11本目の映画が加わる。『スター・トレック(原題:STAR TREK)』とシンプルに題されたその作品はテレビシリーズ第1作目『宇宙大作戦』からのお馴染みのキャラクター達は登場するものの、シリーズのどれにも属さない全く新しい構成で、新鮮み溢れる『スター・トレック』に仕上がっているのだ。

 差別がなく、金というものも存在しない未来。人や異星人はさらなる理想を求めて宇宙開拓を行っている。そんな世界を『M:i:III』『LOST』そして『クローバーフィールド/HAKAISHA』の製作者J・J・エイブラムスがオリジナルのストーリーをリ・イマジネーションし、展開はスピーディーに、そして感動のドラマを盛り込んでおり、シリーズを観た事のない若い世代でも多いに楽しめる映画を作り上げた。また本作の予算は「スタートレック」の映画版史上最も高額の1億4千ドルで、特に最新のVFX技術が目を見張る。

 物語は24世紀の未来から始まる。エリック・バナ扮するネロというロミュラン人が艦長を務めるナラダ号に突如惑星連邦の U.S.Sケルヴィン号が襲われ、800人のクルーの命は救われるが、船長だったカークは殉死する。その名誉ある船長を父に持つのが『スター・トレック』の主人公ジェームズ・タイベリアス・カークだ。本作ではまずジミー・ベネット扮するアイオワ州に住むカークの幼少時代が登場し警官を困らせる程の彼のやんちゃさを描く。クリス・パイン扮する青年期に入っても自分の進む道が分からずトラブルばかりを起こしており、ある日とあるバーで惑星連合艦隊の研修隊員と喧嘩している最中にブルース・グリーンウッド扮する亡くなった父を知るパイク船長に出会い、「父を超えろ」と彼に促され宇宙艦隊アカデミーへの入隊を決意する。

 それから3年後に司官昇任の試験を受けるカークだが、不正行為のため謹慎命令を受ける。しかし、カール・アーバン扮する同期のレナード・マッコイ(医者)の助けを借りカークは攻撃を受け救難信号を送って来たヴァルカンに向かうU.S.Sエンタープライズ号に潜り込む。こうしてカークの宇宙の旅が始まるのだ。若いせいか、ウィリアム・シャトナー扮するカークとは違いクリス・パイン版のカークは生意気ではじめは好感が持てないが、だんだんと自分の命と引き換えに大勢の命を救った父の様な勇敢な面が現れてくる。

 そのU.S.Sエンタープライズ号には『HEROES』のザッカリー・クイント扮するスポックという宇宙艦隊アカデミーのインストラクターでもある人間との混血のバルカン星人がいる。バルカンの外交官である父サレクはスポックが彼と同じ道を歩むと思っていたが、スポックは父の期待を裏切り宇宙艦隊に入ったため、父との関係がぎくしゃくしている。それとは逆に、ウィノナ・ライダー扮する人間の母アマンダは息子を理解し受け止めようとする。バルカン人は感情を表に出さずいつも無表情だが、スポックは自分がハーフという事から家族の事になるとムキになってしまうという一面もある。また本作ではカークに感情を掻き乱されるというシーンもあり、内面的に実は不安定な設定である事が伺える。

 カークは父を亡くし、男のロールモデルのいない環境で複雑な少年期を過ごした。スポックは両親共に生きているが、自分がハーフである事からアイデンティティに関し葛藤してきた。それに加え、物語の中で溺愛する母に悲劇が起きてしまう。この2人はいつもぶつかり合い、表面上は相反しているように見えるが、クルーの中では互いの痛みを分かち合うこと出来る唯一の存在同士なのだ。

 本作はその他にも『宇宙大作戦』からのお馴染みのキャラクターが登場する事が魅力で、『ターミナル』のゾーイ・サルダナが通信士のウフーラ、『ハロルド & クーマー』シリーズのジョン・チョーがヒカル・スール、『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』のアントン・イェルチンがパヴェル・チェコフ、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』のサイモン・ペグがスコッティに扮しており、それぞれにとっておきの見せ場が用意されている。またオリジナルでスポックを演じたレナード・ニモイが本作に重要な役として出演しているのもシリーズのファンには嬉しい。

 本作はシリーズを意識し過ぎないはオリジナリティ溢れる作品だが、デザイン等はテレビシリーズからアイデアを踏襲しているものも少なくない。例えばタイトな宇宙服や髪型等、60,70年代を思わせるものだ。また宇宙船の操縦室はもちろんピカピカで近未来的だが、今回は白を貴重にしているのが印象的だ。またオリジナルでいくのなら、もっとリアルに未来を想定し、人間の寿命が長いだとか、通信機器は電話ではない等の考慮がされていればなお良かった様に思えた。

 本作には氷原でまるで『クローバーフィールド』の様な巨大モンスターが出現したり、マッコイにワクチンを注入された事によりカークの手が饅頭の様に腫れたり、スコッティが水の入ったチューブの中で流されたり、物語上必要なのかどうか分からない要素も多いが、所々で笑いを取ったりし、新『スター・トレック』はJ・J・エイブラムス節の効いたエンターテイメント性の非常に高い作品だと言えよう。初期の作品はわりと神秘的な内容のものも多かったが今回は幅広い観客層を狙ったSFアクションコメディの様相を呈しているので、『宇宙大作戦』ファンがどう受け止めるのかが気になるところ。わたし自身はもっとミステリアスでも良かったと感じてしまった。

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