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米映画批評

デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく?

◆ハリウッドの2大スター共演のスパイ映画 (75点)

デュプリシティ ?スパイは、スパイに嘘をつく?

© 2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 新製品開発。例えば、アップル社がアイフォーンを発表した時の様に、それは会社にとって世界を揺るがしかねない一大事、またライバル社にとっては存亡の危機にも繋がる事。そんな新製品を巡って『デュプリシティ/スパイは、スパイに嘘をつく(原題:DUPLICITY)』では、ライバル同士の2つ会社がそれぞれ腕利きのスパイを雇い、対立する。『フィクサー』でアカデミー賞にノミネートされたトニー・ギルロイ監督2作目である本作は、なんとなくお決まりのスパイ映画の雰囲気を漂わせているのだが、実は一味も二味も違う新感覚スパイ映画なのだ。

 主人公は5年前にドバイで出会ってから腐れ縁でいつも仕事先でバッタリ会ってしまうクライヴ・オーウェン扮するMI6のレイとジュリア・ロバーツ扮するCIAのクレア。互いに「実は騙されてるのかも」という疑問を持ちながらも離れられない2人は政府の仕事を一旦やめるが、現在再びスパイ業に戻りレイはエクイクロム社クレアは Burkette&Randle社(B&R社)という製薬関係のライバル会社にそれぞれ雇われている。そんなとき、B&R社が驚愕の新製品を開発するという情報がエクイクロム社に入り、レイとクレアは会社の争いに巻き込まれてゆく。

 トニー・ギルロイと言えば、ジェイソン・ボーン3部作の脚本を手掛けた事で有名で、初監督作『フィクサー』では最後には心にジーンとしてしまうドラマの秀作を作り上げた。そんな彼の新作はなんとコメディタッチ。本作の興味深く賢い点は、スパイは登場するが、特に暴力シーンはなく、アクションを見せず巧みな台詞で物語を形作っている事だ。唯一あるアクションはトム・ウィルキンソン扮するB&R社の社長ハワードと、ポール・ジアマッティ扮するエクイクロム社の社長ディックが飛行場で殴り合いの喧嘩をするオープニングシーンくらいである。

 5年前に出会ってからローマやマイアミでも会い、5年後またニューヨークで出会ってしまったレイとクレア(2人ともスパイなので実際の名前を名乗っているのかは不明)。業界トップを争うライバル同士の会社に雇われた2人だが、密かに愛を育む彼らが企むのは、雇われている会社を騙し、新製品の情報を手に入れ2人で大金を横取りする事。タイトルの”デュプリシティ”とは1つの物や事に表裏の2面性がある事を言っているのだが、この物語には2つだけではなく幾つもの層が重なり合っており、その複雑なストーリー展開が本作の魅力である。

 レイとクレアは共に口が達者で、観ている側は彼らが会話している時も、彼らが真実を話しているのか分からなくなってしまい、見事に彼らの罠に簡単にハマってしまう。そんなレイとクレアを演じるクライヴ・オーウェンとジュリア・ロバーツが本作では素晴らしいコンビネーションの演技を披露している。『クローサー』で共演し息もぴったりで、ストーリーの中で互いに騙し合うシーンでは彼らの姿が微笑ましくすら見えてしまう。なぜなら彼らが騙し合うのは、好きな人につい意地悪してしまうのと同じで一種の愛情表現なのだ。しかし彼らは時に、騙し合い過ぎて互いの何を信じて良いのか分からなくなるが、それもまた好き同士であるからに他ならない。

 他の共演者もデニス・オヘア、トム・マッカーシー、キャスリーン・チャルファント、リック・ワーシー等が揃い、脇を固めているのだが、本作で数シーンでの出演ながらも最も強烈な印象を残すのはキャリー・プレストン扮するR&B社の女性社員。彼女はセクシーなレイにバーで運命的に出会い(と思っている)、メロメロになってしまうのだが、敵社のスパイと寝た事がB&R社にバレ、彼女がクレアに尋問されるシーンは本作の見どころの1 つである。

 『デュプリシティ』を観て感じる事はやはりトニー・ギルロイはストーリー・テリングが並外れてうまいと言う事。物語の結末にはあっと驚くエンディングが用意されており、映画を観終わった後は満足感が味わえると同時に、レイとクレアの物語をもっと観たいと感じてしまうだろう。本作はエンターテイメントとして大いに楽しめる快作である。

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