◆美人姉妹が犯罪現場掃除のビジネスをはじめる異色作(60点)
記憶に新しいコメディドラマ『リトル・ミス・サンシャイン』。アリゾナに住む問題だらけの家族が末娘のために家族6人でミニバスに乗り込みミスコン会場を目指すこのドタバタ劇はアメリカでは口コミで大ヒットし、2006年度のアカデミー賞作品賞にノミネートされた。2009年公開の映画『サンシャイン・クリーニング』は前者と同じくタイトルに「サンシャイン」が付いており、問題だらけの家族のコメディドラマで、子供もおり、アラン・アーキンも出演しているため、「この映画観た事あるぞ」と思わされるが、この映画はなんとスプラッター映画なのだ。
主人公ローズ・ローコウスキー(エイミー・アダムズ)は高校時代チアリーダーのキャプテンでアメフトチームのクオーターバックの彼氏がいた皆に羨ましがられる存在だった。しかし30代になった現在は独身子持ちでメイドとして働いており、そんな現実にウンザリしている。そんな時、学校で問題児の息子オスカーを私立学校に入れるため、父(アラン・アーキン)と暮らす妹ノラ(エミリー・ブラント)に、割の良い仕事=犯罪現場の掃除(自殺も含む)を一緒にやらないかと持ちかける。2人の未経験の女性が犯罪現場に飛び込み、悪戦苦闘しながらも自分たちのビジネスを成功させて行こうとするのだが…。
『シルヴィア』で知られる映画監督クリスティン・ジェフズが監督を務める本作『サンシャイン・クリーニング』は昨年のサンダンス映画祭でプレミア上映された。物語の様々な要素が『リトル・ミス・サンシャイン』と混同してしまいそうになるのだが、演技派の素晴らしいキャストが集まり、観た事ありそうな雰囲気の映画にアクセントを添えている。特に『プラダを着た悪魔』等に出演していたエミリー・ブラントのサバサバした演技が目を引く。なかなかの美人だが、なぜか本作の様なゆるいコメディにピッタリの女優で、どうしようもなく魅力的に映ってしまうのである。
ローズは高校時代に付き合っていた現在は妻のいる男性マック(スティーヴ・ザーン)と不倫関係にある。いつもモーテルで密会をしているがローズは幸せではない。ノラもまた自分とは全く合わない町に退屈し心の中で苛立っているが、外へ行けないその場に縛り付ける何かが彼女にはあるのだ。この2人が犯罪現場の掃除を通してどう変わっていくのかが本作の見どころである。
アカデミー外国語映画賞を受賞した今話題の『おくりびと』は生と死を見つめ直すドラマだが、『サンシャイン・クリーニング』にも同じ様な要素を見出す事が出来る。犯罪現場に出向くという事はその場に死があったという事。ローズとノラは始めは眼前にある大量の血や臭いに驚かされるものの、仕事の経験を重ねるごとに冷静に死と向き合う様になる。そうして彼女達は犯罪現場の掃除というものにやりがいを感じ、少しずつ前向きになってゆくのだ。
『サンシャイン・クリーニング』は『リトル・ミス・サンシャイン』同様、ちょっと泣けて、最後にはさわやかな感動を与えてくれる。しかし、惨劇が繰り広げられたであろう犯罪現場で2人の可愛い美女が掃除する姿を誰が信じるだろうか。実際、彼女達が掃除で苦労している姿はあまり描かれず、だいたい彼女達は現場で凄い光景を見たり、そこで何か見つけたり、口喧嘩したりしているのだ。本作は好感は十分に持てるが、そこまで真剣に観る必要も、深く考える必要もない作品である。
(岡本太陽)
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