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EVERLASTING MOMENTS - 岡本太陽

◆巨匠ヤン・トロエル監督が描くある実在した女性の人生(60点)

 人生の中で誰にでも運命の出会いや人生を変える出来事があるだろう。宝くじも人生を変えてくれるものの1つに数えられるかもしれない。今年のゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされたスウェーデン映画『EVERLASTING MOMENTS』は、宝くじで大金ではなく、1つのカメラを手に入れ人生が大きく変わってしまった実在したある女性の半生を描く。

 20世紀初頭、スウェーデンにマリヤ・ラーソン(マリヤ・ヘイスカネン)という女性がいた。フィンランド移民の彼女は子供にも恵まれたが、夫シグフリード(ミカエル・パーシュブラント)の酒癖の悪さにいつも頭を抱えていた。そんな中、彼女は家の中で眠っていたカメラを発見する。結婚前に宝くじで当てたものだ。もともと感受性の強かったマリヤは下層階級だが、デンマーク出身のカメラ屋セバスチャン・ペダーゼン(イェスパー・クリステンセン)の助けがあり、フォトグラファーとしての才能に目覚めていく…。

 本作の監督を務めるのはスウェーデンの大御所ヤン・トロエル。彼は巨匠イングマール・ベルイマン等と共に本国で活躍し、『移民者たち』ではアカデミー賞監督賞にもノミネートされた。彼は自ら脚本も手掛け、撮影監督もこなすというマルチな映画監督でもある。アメリカではシドニー・ルメットやクリント・イーストウッドが高齢でありながらもまだまだ新作を発表している様に、彼もまた新作が待機しているパワフルな映画監督だ。

 本作はマリヤ・ラーソンの娘マヤのナレーションで幕を開ける。そして貧困の中で結婚生活もうまくいかないマリヤの波瀾万丈の人生が描かれていく。夫の不倫や暴力のせいで何度も家を出ようとするが、子供が理由ではない何かが彼女を引き止める。物語の中では多くの場合夫の事を快く思わないマリヤだが、時に彼ら2人には幸せのひと時があり、それが夫に対する愛しさを呼び起こしているのだろう。成長した息子に彼女はシグフリードともう別れてもいいのではと問われる。しかし、彼女はそれを軽く受け流す。そんな事は何度も考えたが彼女自身運命の夫と別れる事は不可能と思っているように伺える。

 カメラははじめ売るはずだった。しかし、時が経つにつれてレンズの魔法に取り付かれたマリヤ・ラーソンにとって人々や動物、地球上にいる全てのものの一瞬を映し出すカメラというものがかけがえのないものとなっていく。また彼女の腕は町の評判となり、彼女は人々の記念写真を頼まれる様になる。そこにカメラに夢中になっているマリヤの事が気に食わない者が現れる。それは夫のシグフリード。しかし、彼はマリヤが撮った子供たちの写真を見て感銘を受ける。以前はカメラについて無知だった2人。そこはこの夫婦がカメラというものの素晴らしさを分かち合う瞬間である。

 カメラがなくても生きていける。たしかに芸術がなくても生活していく事は出来るかもしれない。しかし、音楽、絵画、詩などはわたしたちの人生を謳歌するには欠かせない要素ではないだろうか?いくら忙しくても芸術に触れる時間を持つ事は人間にとって必要不可欠であると言っても過言ではないだろう。『EVERLASTING MOMENTS』はある1人の女性の人生を通して、監督ヤン・トロエルが芸術がどれだけわたしたちの人生を鮮やかにしてくれるか、という事を教えてくれているようだ。

岡本太陽

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